30.恋煩い
夜、ベッドに入って私は考えていた。
どうやら私はパージバルさんのことが好きらしい、と。
いや、いつ、なんで?
パージバルさんには失礼ながらそんなことを考えてしまう。
最初の印象は本当に真面目クソ眼鏡だったし、その後も迷える子羊だった。だけど、頭が硬いだけでいい人なのは伝わってきていたし、アリシア軍団から助けてもらった時に初めてかっこいいなんて…。
いやでもあれは、助けられたら絶対に思う感想であって、惚れたからとかじゃないはず!
なんかその後眼鏡を取ったパージバルさんにキスしそうになったけど、それはパージバルさんに私を見て欲しかっただけで断じてキスをしたかったわけでは…いや、私を見て欲しかったって何だよ!そもそも眼鏡を取ったらカッコ良すぎるパージバルさんも悪くない!?
ベッドでバタバタしていると横の部屋から壁を叩かれた。多分ターニャだ。聖女たちの住む寮は壁が薄いので、うるさいと怒ってきたのだろう。私は体を動かさず、頭だけ動かすことにする。
仮に私がパージバルさんが好きだとして、パージバルさんも私を好きなんだから、両思いのはずだ。何の問題もない。何だったら身分の問題もない。
だけど、私はこの恋心を認めたくない。だってパージバルさんはターニャの見た目がいいんだもん。私の見た目なんか絶対好みじゃないと思う。そりゃあ見た目だけでってことはないと思うし、私の性格も好ましく思ってくれているとは思う。「見た目なんかどうでもいい、君の内面が好きだ!」とか言ってくれる可能性もあるだろう。いや、真面目眼鏡なのでそんなキザなことは言えないかもしれないけど。
でも、好みの見た目はターニャであることに私はずっと引っかかりを覚えるんだろうな。
私とターニャの見た目は正反対と言っていいほど違う。
ターニャは身長少し高めで胸もお尻もすごく大きいわけではないけど、そこそこあるナイスバディで、顔立ちも大人っぽく切長の目が綺麗な女性だ。そう、同い年だけど少女や女の子という表現より女性という表現が似合う人。
その一方で私は小柄な貧乳。幼い頃から栄養は全て神に捧げているので、成長ができなかったのだ(言い訳)。顔立ちも少し幼い感じで、目がやたら大きいところがチャームポイントであり、幼さを助長しているポイントでもある。こんなこと言いたくないけど、アリシアと同系統だ。
ターニャの見た目が好きなら、私の見た目なんて絶対好きじゃないと思う。
「うううううう」
私は呻きながら布団にくるまった。
初めての経験でどうしていいのか分からないのだ。
とりあえず寝よう。
そう思ったら疲れていたのか案外すぐ寝れた。




