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26.セオドア=パージバル

視点が変わります。

セオドア=パージバル視点です。

ある日の昼食休憩。

授業終わり、いつもなら一緒に昼食を取る王子殿下の姿が見えず私は苛立っていた。

先日殿下が私に何も言えず消えた時は、アリシア=シードランとかいう何がいいのか分からない男爵令嬢を高位貴族専用のレストランの個室に連れ込んでいて、今回もそうなのだろうと苛立ちから足音が大きくなる。


殿下はとてつもなく優秀で、配偶者にそこまでの資質を求めなくてもよいのだが、だからといってちょっと可愛いくらいの教養もない女性を王妃にするというのは受け入れ難い。


おそらく自分は、殿下を性格以外は完璧だと思っていて、殿下なら言われなくても王妃に相応しい人物を選ぶのではないかとどこか期待していた。そしてそれが裏切られたために勝手に失望しているのかもしれなかった。


いや、どうしても彼女を妻に迎えたいというのであれば、教育をすればいいだけの話。殿下だって1人の男だ。好ましい女性を妻にしたいというのは当然。


色々な感情が入り混じり、整理がつかない。


その複雑な感情のまま、レストランの給仕に聞いた殿下がいるという個室を開けると、思ったよりも大きな音がした。


部屋を見渡し、殿下と女生徒が2人きりでご飯を食べているのを確認すると私は声を荒げる。


「殿下っ!貴方って人はまた御令嬢を個室に連れ込んで…!紳士の基礎から学んで来てください!!」

「出た。真面目クソ眼鏡。」


相変わらずの呼び名。本当にこの人は…!


「真面目クソ眼鏡はあんまりでは?」


その聞き覚えのない声で、私は気づいた。

殿下が共にいた女性がアリシア=シードランではないことに。


女生徒の大きなラピスラズリの瞳と目があう。


その瞬間、私は動けなくなった。



あまりの美しさに目を奪われてしまったから。






彼女はターニャ=トラパルトというらしい。トラパルト男爵家の長女で、聖女。今回は魅了の調査にやってきた。


トラパルト男爵家というのは最近落ちぶれてきている家のため、聖女にならざるをえなかったのだろう。聖女は尊き立派な仕事ではあるが、その清貧さから貴族には好まれない。


彼女は聖女らしい高潔さを身に纏い、彼女にいいところを見せようとして呆気なく失敗した私を優しく励ましてくれるようなところがある一方で、貴族らしからぬ気安さで私や殿下に話しかけ、物理的に距離を近づけてくる。

その度に私の心臓は強く脈打ち、それを誤魔化すために『淑女』を説いて注意するのだが、そんなこと意に解さない様子で改善は見られず、殿下との距離はあまりにも近いままだ。


それに嫉妬してしまう自分は本当に愚かだ。


そして殿下も今までなら女性に対して適切な距離で対応していたのに、彼女に対しては図書室で横に座ったり、耳打ちしたり、遊びに入れてもらったり、自分から近づいていく。


それが意味することは一つだろう。


「殿下はトラパルト嬢を王妃にするつもりなのですか?」


私の言葉に殿下は過去最高の顰めっ面を見せた。


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