24.救い
「私のせいで、お姉さまが聖女になって神殿に入ることになってしまったから、ずっと追い目を感じていたのよ。」
ポツリとフランシスカはこぼす。
「私の学費を払うためには、お姉さまが聖女になってお金を稼ぐしかなかったの。神殿が辛くて厳しいところだと聞いていたから、私はそんなことになるくらいなら学校に行きたくないって言ったけれど、お姉さまは『フランは頭がいいんだから、絶対に行くべきだ』って言って神殿に行ってしまったの。」
私は物心着く前から神殿にいるのでそんなことはなかったけど、確かに神殿に来たばかりの貴族令嬢は毎日泣いて辛い辛いと言っている。私からしたら日常だけど、過酷だとは思う。
「おまけに私は試験で失敗して、下位クラスにしか入れなかったし、罪悪感が凄かったの。」
フランシスカは私を見て「でも」と続ける。
「ターニャと出会って、神殿の話を聞いているうちに、とてもいい場所なんだなって思えるようになったの。お姉さまがくれる手紙には『神殿の生活も楽しい』って書いてあったけど、私に気をつかっているだけだろうとあまり信じてなかったのよ。でもターニャみたいな友達がいて、私すら知らない男性の趣味を暴露できるような関係が築けているんであればきっと真実なんだろうなって。こうやってシャボン玉で遊んだりして充実した毎日送ってるんだろうなって、救われた気持ちになったの」
「…なら、よかった。」
私の存在でフランシスカの気持ちが少しでも楽になったのなら、私がこの学校に来たのも無駄じゃなかったと思える。現状、魅了事件では私が学校に来ている意味皆無だからね。
「そもそも聖女様ってこの国に絶対必要な存在なのに、扱い雑だよね〜。もっと蝶よ花よの扱いをされるべきじゃない?」
「ほんとそれ!!!」
私は気持ちのこもった叫びを上げる。モニカ分かってるぅー!
「聖女のメリットってなんだろ…お給金がもらえることと、あとは良いところに嫁げるくらい…?」
モニカが首を傾げる。私にもそのくらいしか思いつかない。
「ターニャはまだ結婚相手とか決まってないの?」
「決まってないなぁ。」
聖女の結婚は神殿が調えることが多いけど、王女である私の場合は多分両親がいい人を見つけてくれるだろう。
王女が降嫁されるのは基本公爵家か侯爵家って聞いたことがあるので、私もそうなるだろうな。その中で年の近い…
そこまで考えて1人の眼鏡が浮かんできて、慌てて打ち消した。
パージバルさんはそんなんじゃないし!!
「ターニャ顔を赤いよ?」
「きょ、今日は暑いね!噴水の中入っちゃおうかなー。」
「え!?」
動揺していた私は2人の静止を聞き流し、靴と靴下を脱ぐと、スカートを捲し上げて噴水の中に入った。
「冷たくて気持ちいいよ!2人も入る?」
「それは流石に…。」
2人からフラれた私は、噴水の中から水攻撃を送る。
「もう!制服濡れるでしょう!」
「きゃははっ。」
貴族令嬢に良くないことを教えているな、と思いながらも楽しくて、私たちはわーわー遊んだ。
そんな時。
「楽しそうなことをしているな。」
「…!貴族令嬢がそんな足を見せるなんて…!!!」
お兄様とパージバルさんがまた口出しして来た。




