【掌編】運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!
再投稿にあたり加筆しました。
「リラ、お前との婚約を破棄する!」
「どうしてなのアルノ!?
理由を聞かせて!」
レストランで繰り広げられる婚約破棄騒動、私はその渦中にいる。
「俺はお前みたいな屋根裏にこもって怪しげな実験ばかりしてる根暗な年増女には、もううんざりなんだよ!」
「酷い!
私はまだ22歳よ!
それに私がしてるのは怪しげな実験じゃないわ!
悪霊を魔晄炉で溶かして魔石を作ってるだけよ!」
「これ以上ないってぐらい怪しいだろっっ!!!!!
お前、自分で言ってて疑問に思わないのか!?」
私は胸に手を当てて考えた。はて? 悪霊を魔晄炉で溶かして魔石を作る行為はそんなに怪しい行為なのだろうか? 国にも研究を認められてるし、魔石を作る許可も取っている。
私はわからないって顔で首をかしげた。
「もういい! お前とは話すだけ無駄だ!
俺は怪しげな実験を繰り返すお前を捨てて、若い女と結婚する!」
「若い女って誰?
子爵家のメイドのゲレさん?
男爵家の家庭教師のルーさん?
酒場の店員のデラさん?
宿屋の看板娘のダメちゃん?
商会の事務員のホレさん?
子爵家のメイドのゲレさんには借金を抱えたお兄さんがいるし、
男爵家の家庭教師のルーさんには隠し子がいるし、
宿屋の看板娘のダメちゃんはああ見えて未成年だから、
この三人はおすすめしないわよ」
「俺の交友関係を全部把握してんのかよ!
俺の知らないことまでなんで知ってるんだよ!?
気持ち悪いな!」
「誰と浮気してもいいから、私とは別れないで!
なんなら浮気する費用も出すから!」
私はアルノの腕を掴んだ。
「煩い! 怪しげな実験を繰り返してきた汚い手で俺に触るな!
いいか、二度と俺には関わるなよ! 街で俺を見かけても無視しろ!!」
しかしアルノは私の腕を振り払い、不機嫌な顔で帰ってしまった。
「捨てないでアルノ〜〜!!」
私の泣き叫ぶ声だけが店内に響いていた。
アルノと付き合って5年。
彼は悪霊を吸い寄せる体質で年中悪霊に取り憑かれていた。
悪霊を魔晄炉で溶かして魔石を作るのを生業にしている天才錬金術師の私には、アルノは理想の相手だった。
祓っても祓っても悪霊を憑けてくる歩く悪霊ホイホイのアルノは、原料の良い収集場所だったのだ。
「惜しい人材を失ったわ……」
私が悲しみにくれていたその時。
「あなたとは別れるわ!」
「なぜなんだ! ソフィア!?」
「あなたと一緒にいると不幸なことばかり起こるの!
あなた悪霊に取り憑かれてるんじゃないの?
もう二度と私とは関わらないで! さよなら!」
二つ隣のテーブルでも若いカップルが別れ話をしていた。
振られた男の背後には悪霊だけでなく悪魔も憑いていた。
男に取り憑いているのは悪霊と悪魔が5体。しかも悪魔と悪霊が仲良く手を繋いでダンスしてる。
こんなのに取り憑かれたら、取り憑かれた人間は確実に不幸になり、その不幸は家族や婚約者にも及ぶだろう。
「これで十人目……。なぜ……僕ばかりこんな目に……」
この世の終わりのような顔をする男性を、彼に取り憑いた悪魔と悪霊がニヤニヤと笑いながら眺めている。
あいつらは取り憑いた相手の不幸を何よりも好む、ろくでなしだ。
しかしそんなあいつらを眺めながら、「あいつらを纏めて魔晄炉にぶっこんだらどんな魔石ができるのかしら!」とワクワクしている私も大概だと思う。
彼は悪霊を引き付ける天才だわ! その素質はアルノ以上! 稀に見る逸材だわ!
私の運命の相手はアルノではなく彼だったのね!
神様! 運命的な出会いをさせてくださりありがとうございます!
「あの……私リラと言って錬金術を生業にしているものです。
初対面でこんなこと言ってごめんなさい、私と結婚してください!!」
私は男性の元に行きプロポーズをした。
「えっ!?」
男性が突然の求婚にキョトンとした顔をしている。
「私、あなた(の悪霊を引き寄せる体質)に一目惚れしたんです!
結婚してください!」
「でも僕は悪霊に取り憑かれやすい体質で、祓っても祓っても取り憑かれて……」
「最高じゃないですか!」
「僕と一緒にいるとあなたも不幸になるかも……」
「私があなたを幸せにしてみせます!」
「そ、そんなに言うのであれば……。
僕の名前はカイト、古書店を経営してます。
悪霊を寄せ付けてしまう体質の僕ですが、よろしくお願いします!」
私の勢いに押されて彼は頷いた。
こうして需要と供給が一致した私達は、結婚しハッピーに暮らしている。
私と別れたあとアルノは新しい悪霊に取り憑かれ、それを祓えずに不幸になったらしいけど私にはもう関係ないわ。
アルノに言われた通り街で彼を見かけても無視しているし、彼と二度と関わる気はない。
―終わり―
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