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父が亡くなって10年

作者: 水妃
掲載日:2022/10/30

父が亡くなって

もう10年か。


自分はよく周りの先輩から

親とあと何回会えるかたまに考えてみてね。

実は離れて暮らしていると結構会えないもんだからさ……


と言われ続けていたから

出来る限り会うようにしていた。


何よりも、

自分も家族と直接会って語りたかったから。


もちろん、

飛行機が必要になる距離だったから

頻繁には会えなかったけど。



ある日、

父から身体に良くないものが出来たと連絡がきた。


父は50代後半で

職場の人事異動が決まり、

しかも今まで二人体制で行っていた仕事を

一人で行わなければならなくなっていた。


変化に変化を重ねていた状態で、

間違いなくストレスがかかっていたので

嫌な予感がした。


詳しく検査してみると、

胃ガンだった。


胃を全摘し、

その後、高熱が続いた。


その時、余命4ヶ月と言われた。


でも、さすがに長期間に渡って高熱が続くというのは

おかしいということになり、

さらに検査を重ねてみると

悪性リンパ腫という違う病気だった。


悪性リンパ腫であれば治るとの事だったが、

胃は全摘済みで、

腸閉塞を繰り返し、最後は敗血症になり

亡くなってしまった。


自分は、

お互いに後悔しない為にも

父と何度も話し言葉を重ねたが、

実際に亡くなってみると、

あらゆる後悔が頭の中を駆け巡った。



近くで暮らしていた方が良かったのでは?


僕は自分の夢だけを優先し過ぎて

家族の存在を忘れていたのではないか?


あの時、もう少し違う言葉をかけれたのでは……。


セカンドオピニオンをしていれば良かったのでは……



仕事、仕事、仕事、仕事、

稼がねば、この資本主義の競争で勝ち残らなければ、

1位にならなければそればっかりになっていた。


亡くなる前に父に送ったメール、

未だに父から返信が無いメール。


僕は、今も携帯から消せない。


僕の最後のメールが

父は読めたのか、

読めなかったのか、

それは僕には分からない。


何故、我々は死ぬのに生きないといけないのだろうか。

摂理といえばそれまでだが、

何度も何度も問いかけた。



父は死を持って、

人生は有限であるということを

僕に教えた。


命をかけてそれを教えてくれた。


今も父の直筆を見ると、

写真を見ると、

目を閉じて彼の顔を思い浮かべると、

彼はこの世界に確かに存在していたことに気づく。

僕の中にしっかりと生きている。


僕の足の形は父にそっくりで、

息子の足の形も僕にそっくりだ。


父の血もこの我が子に流れていることに気づき

さらに愛しくなる。



父は少し神経質なところもあり、

半年に一度しっかり健康診断をしていた。

それでも助からなかった。


母は、

心筋梗塞、糖尿病、半月板損傷、子宮がん

様々な病気をしているが今も生きている。


元気だった父や、母の兄など

親戚が先に旅立った。


こればかりは分からない。


天命なのかも知れない。



ある日の夕方、僕は散歩をしていた。


老夫婦が笑顔で手をつなぎながら

紅葉を見ながら歩いていた。


僕は自然と涙が溢れ出してきた。


頰がそれを確かに感じた。


父も生きていたら、

母とあのように

幸せそうに手を繋いで歩いていたのかな。


孫を抱いていたのかな。


僕は前向いて歩き続ける。

時々、休憩しながらね。


そうだ、

病室で父は言ってくれた。

「お前の声を聞いていると何だか落ち着くよ」

僕は嬉しかった。

父の役に立てた気がしたからだ。


これからの人生、

あと何年あるかは分からないけれど、

その日まで少しでも誰かの役に立てたらなと思うよ。


さて、

時間だ。


家の前の落ち葉を拾うとしよう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 良いエッセイです。 [一言] 感動しました。読めて良かったです。
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