ウィグランド・アジェーレその1
私は愚王だ。
今は、私の事を賢王と呼ぶものもいる。
しかし、今も昔も私は愚王なのだ。
我が国は、血の気の多い者の集まりだった。
だが、国同士で争う事はなかった。
人同士で争うくらいなら、モンスターを狩って、土地を開発した方が早いからだ。
だから、我が国は、特にモンスターを狩るものの多い狩猟国家だった。
そんな国の第一王子として私は生まれた。
他の者に類を見ず、私はモンスターを狩ることに夢中になった。
そして、私には戦う才があった。
だから、私は益々モンスター狩りに打ち込んでいったのだ。
今となっては、何よりも後悔している。
モンスターを狩る以外にも、女の尻でも追っかけておくべきだったのだろう。
そうして、そのまま大人になり、父と母が病で亡くなり、私は順当に王となった。
だが、私は何も変わらなかった。
王となっても、政治は全て部下に任せ、ひたすらモンスターを狩る日々だ。
狩猟国家の王としては正しいのかもしれないが、他の国と比べれば、愚王と言う以外ないだろう。
そして、ついに運命の日はやってくる。
魔王軍が現れたのだ。
私はその時、"喜んだ"。
今思えば、最も愚かだったのだと思う。
戦いに飢えていたのだ。
もちろん勝利にも。
だが、実際に戦が始まると連戦連敗だった。
魔王軍の攻め方は狡猾だった。
私が軍を動かしても、ぎりぎり間に合わない事が多かった。
そう言う風に攻めているのだろう。
これが戦だ。そう言わんばかりの戦い方だった。
私は、ただモンスターを狩って遊んでいただけに過ぎなかったのだ。
政治を任せていた文官たちも、戦に通じるものなどいなかった。
だから、負けていても、私が指揮をとるしかなかったのだ。
気が付いたら、土地は占領され、軍も少しづつ減っていった。
更に、弟達も死んでいき、私一人となってしまった。
まさに、愚王に相応しい末路だった。
だが、ある日、私はあいつに出会った。
キルエス・ガーレムに。
いつもと変わらない出撃だった。
俺が決めた出撃だ。正直に言うと、また間に合わないのだろう。
そう、思っていた。
だが、間に合った。
最初は、いったい何が違うのかわからなかった。
だが、助けに入った領民の全てが、
「キルエス様のおかげです」
そう言うのだ。
俺はその時、キルエスという男に、大変興味が湧いてしまったのだ。
だから、見つけたときには驚いた。
キルエスは、まだ少年だったから。
「お前がこの軍の指揮官か?」
信じられなかった。こんな少年が、この領地を守ったというのだろうか?
「指揮官と言うわけでは……僕はただの領主の息子です」
少年の瞳は力強かった。
両親を失い、領地を蹂躙され、それでも尚悲しみに暮れていない。
戦える目だ。
そう思った。
それから少し話したが、思った通りの言葉をキルエスは言ってくれた。
「それでしたら、是非ウィグランド様の元で働かせてほしく思います」
自分から言い出さなければ私が言うつもりだったのだが、そうならずに"にやり"としてしまう。
もちろん、私の答えは決まっている。
「そうか。俺もお前が欲しいと思ったのだ。ここを見てな」
きっとキルエスは、一兵士として加わる気なのだろう。
だが、私はそんな気はなかった。
「おっと名乗るのを忘れていたな。俺はウィグランド・アジェーレだ。よろしくな」
私は手を出す。
「僕はキルエス・ガーレムです。よろしくお願いします」
そして、当然キルエスも私の手を取った。
これが、私がした唯一の正しい判断だったのだろう。




