ウルスメデスその8
今日も仕事が終わり、あたしは部屋で食事をしていた。
戦場は、昨日は大勝だったようだけど、今日は大敗だったようで、城内は慌ただしい。
そんなあたしの目の前に、どさりと落ちて来た"もの"があった。
「いてて……」
それは、あたしの変な友人だ。
どうにも"着地に失敗した"ようで、床に這いつくばる形になる。
「床の味はどうだ?」
あたしは意地悪に言ってやる。
「随分と綺麗な床で助かるよ」
自慢だが、毎日侍女がピカピカに磨いているからな。
ピエロの仮面をしたそいつは、床から立ち上がると、当たり前のようにあたしの正面に座った。
足を引き摺っているようだったが、見なかったことにしてやる。
「どうだった?」
何がとは聞かない。
そもそも、あたしはこいつがどこで何をしているのかもしらないのだから。
だが、それがいいのだろう。
「そうだね――見た目ほど簡単ではなかったという事かな」
こいつの言い方も、抽象的過ぎて、わかるようでわからない。
いつもこうなのだ。
そう思ったが、いつもと言う程会ってはいないか。
「それは大変だったな」
あたしは笑う。
上品な笑い方ではなく、口が横に伸びた、"自然な笑い方だ"。
「ははは」
ピエロも釣られて笑ったようだ。
と言っても、笑い顔も見えないのだが。
しばらく二人で意味もなく笑い合った。
「ねぇ、歌ってくれないかな?」
笑い終わったころに、ピエロはそう言う。
「なんでだよ。嫌だね」
そもそもそれは、昨日やってやった。聴いてなかったのだろうけど。
「そう、残念だ……」
ピエロは落ち込んだようだ。
落ち込むよりは、食い下がって欲しかった。
「仕方ねえな。偽物の歌でいいなら、いくらでもよ」
そう言って、あたしは立ち上がる。
「~~~」
そして、歌いだした。




