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ベナミス・デミライト・キングその4

 今日はいつもより早く起こされた。

 と言っても、皆はもう起きているのだが。

 奴隷だったころは、これくらい早朝に起きる事など普通だったからな。

 習慣が抜けないものも多いようだ。

 俺はそんなこともなく、眠れるなら眠れるだけ眠るけどな。

 そして、早起きさせられた理由は、もう出陣するためのようだ。

 


     ♦



 何故か我々の"奴隷部隊"は最前線に配置された。

 元々駐留していた部隊と入れ替わらせられる。

 夜の間に、多少の小競り合いがあれど、魔王軍との距離はある。

 だが、すぐに命令が下され、進軍が始まった。


 戦場での俺の仕事は声を出すことだけだ。


「いいぞジッタ!そのまま倒せ!ヨッツ!ジェクシーを助けてやってくれ!」


 部隊の人間は全員名前を憶えている。当たり前だ。家族のようなものだから。

 一応言っておくが、俺だってモンスターと戦うことは出来る。

 体格には恵まれたからな。"弱いモンスター"ならいくらでも来い。


 戦場を支えているのは、やはりダオカンだ。

 奴がいなければ、誰かしら死んでいてもおかしくはない。


「ラエイン!そんなに前に出るな!」


 そして、若手のラエインは弱い。

 俺より弱いんじゃないだろうか?

 それなのに、どうして敵に立ち向かえるのだろう?

 若さ故だろうが、眩しすぎる。


 ふと横を見ると、どこぞの部隊が突出していた。

 一体どこの部隊かわからないが、勇猛なことだ。

 特に、戦闘で戦っている兵士は随分強いようだ。

 遠巻きでよく見えないけどな。



     ♦



 そうして、俺達はがむしゃらに戦い続けた、その時だった。

 おっと、俺は戦ってないけどな。


「おお!見ろ!ウィグランド王が敵本陣を破ったぞ!」


 これは、レミトル軍団長の声だ。

 少し前から思っていたが、レミトル軍団長の声は"大きい"。

 戦場によく響き渡るのだ。

 もしかしたら、軍団長に選ばれた理由は声が大きいからなのかもしれない。

 なんて考えたら失礼だな。やめよう。

 俺だって、人の事は言えないしな。


 レミトル軍団長の声を聴き、見上げると、確かにウィグランド王が、敵本陣で旗を持って立っている。

 と言うか、思ったより敵本陣が近い事に驚いた。

 思ったより戦場を進んでしまったのかもしれない。


 俺が、そのウィグランド王の姿を確認したころに、戦場であらん限りの歓声が上がる。


「うおおおおお」


 せっかくなので、俺も少し遅れて、歓声を上げといた。

 だが、まだ戦が終わったわけではない。

 まだ戦わないと。

 もちろん戦いたくなんてないし、俺は戦わないが。



     ♦



 人間軍は攻撃の手を緩めることなく突き進み、ついに砦へと辿り着いた。

 我々もこの国には来たばかりだが、説明は受けている。

 ここが、敵将が普段いるという砦だ。

 つまり、ここが敵軍本拠地という事である。

 なんだか、とんとん拍子でここまで来てしまったが、大丈夫なのだろうか?あまりにもうまく行き過ぎである。罠ではないだろうか?


「伝令です。部隊を城まで下げるようにとのこと」


 そんな俺の心配をよそに、伝令が届いた。

 いいのか?帰っていいと言われたら、喜んで帰るぞ俺は?

 そんなことを考えながら、俺は"喜んで帰った"のだった。

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