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ベナミス・デミライト・キングその2

 これが一つ目の秘密だ。


 革命軍には"革命を起こす気などない"。


 そんな革命軍に入ることに緊張しているラエインを、内心で笑いながら、テントの中に入り、馬鹿騒ぎしている皆を一喝して、ラエインに挨拶をさせる。

 

「ラエイン・ノステルです!今日から革命軍に入隊することになりました!よろしくお願いします!」


 随分と気合の入った声だ。

 ラエインという若者は、きっとここが本当に革命を起こすための集まりだと思っているのだろう。


 いや、この革命軍全体で見ても、7割くらいは、そう思っているのかもしれない。

 だが、何人かは気付いているだろう。

 この革命軍に革命を起こす気などないことに。

 

 だいたい何が革命だ。ただの反乱だろう。

 起こるはずのない反乱だ。


 なぜ起こるはずがないかと言うと、それは単純だ。

 魔族が強いからだよ。

 ここの魔族の長は、"グザン"という。

 でっぷりと太った。弱そうな見た目の魔族だ。

 だが、弱そうなのは見た目だけで、奴は強いのだ。

 おそらくここにいる全員が、武器を持って一斉に襲い掛かったとしても、グザン一人で全滅できてしまうだろう。

 もちろん実際には、他の魔族がいる。奴らが使役しているモンスターまでいる。

 勝てない戦に挑むほど馬鹿ではない。


 では、気付いている者も含めて俺が何故ここにいるのかと言うと。それも単純だ。

 奴隷生活の中にもいい目を見る日があってもいいだろう。

 それを糧に一か月頑張るんだよ。


 ふと見ると、ラエインの挨拶も終わり、ラエインが飯を食いだしてる。

 ラエインは泣いている。

 まともな食事など数年振りだろう。誰だってそうなる。

 

 今は、革命だと息巻いているラエインも、いつかはそれが馬鹿馬鹿しい事だと気付くだろう。



     ♦



 宴を楽しんで、静かに酒を飲んでいると、いつの間にかラエインが隣に来ていた。

 俺を見る目が輝いている。困った奴だ。

 その向かいでダオカンが、ラエインの肩を組んでいた。

 ダオカンがどうにかしてくれるだろう。

 あの少年の目は俺には眩しすぎる。

 静かに飲ませて欲しい。 


 この酒や、飯は、皆で少しずつ魔族の目をちょろまかして一か月間溜めたものだ。

 それが見つかって、殺されたものもいる。

 無駄には出来ない。

 最もそれだけではないが――。


「元王国の軍団長よ」


 いつの間にか隣でダオカン盛り上がっていた。

 話は聞いていなかった。

 だが内容はわかる。

 いつもの"くだらない話"だろう。


「~~~」


 ダオカンが何か言っている。ろれつが回ってないぞ。


「運悪くだけどな」


 適当に相槌を打っておいた。

 絶妙な答えだったのだろう。ダオカンが俺の頭をぐりぐりと手で押す。

 面倒なので、俺はされるがままだ。

 すると、ラエインの目が輝く。

 この少年は、間違いなく俺という人間を誤解している。

 その目をやめろ。



     ♦



 楽しい時間にも、終わりの時はくる。

 いつまでも宴を続けているわけにはいかない。

 俺達には明日からも、奴隷としての厳しい、厳しい仕事があるのだから。


「そろそろ、時間だな……」


 これが終わりの合図だ。

 ここから最後の儀式をやって、宴は終わりにするのだ。

 ダオカンが皆に号令をかけている。

 いつも思うんだが、ダオカンの方が俺よりリーダーに向いているよな?

 まあ、"俺にしか出来ない仕事"があるのだが。


「革命軍に栄光あれ!」「革命軍に栄光あれ!」「革命軍に栄光あれ!」


 ほら始まった。馬鹿らしい号令だ。

 ラエインも目を輝かせながら、声を張り上げている。

 

 本当に馬鹿馬鹿しい。

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