表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/228

ベルテッダ・シュクラその8

 俺は今、学園まで来ている。

 別に、あのババアや、あのお嬢ちゃんが心配になったわけではない。

 部屋で待ってても、ピエロの野郎は来ないし。

 ただ、いつ頃この国から逃げ出せばいいのか気になっただけだ。


 学園の警備は相変わらずザルである。

 簡単に中に入れてしまう。

 適当な部屋に入ると、魔導書が積まれていて、盗みたい放題だなと思う。

 まあ、この国のものは勘弁しといてやろう。


 そうして、奥へと入っていき、例の部屋の前へと辿り着いた。

 この部屋がなんなのか知りもしないが、この部屋で"事"が起こっているのだと俺の勘が告げている。

 さっそく鍵を開けたいところだが、鍵穴はない。

 これでは俺の開錠の技術も役に立たない。

 それに耳を当てて見たが、中の音も聞こえない。

 

 そうしている時だった。


 扉が開いた。

 俺はと言うと、扉に耳を当てた状態だったため、姿勢を崩して、扉の中に向かってこけてしまった。


「いてて……」


 自然と上を見上げると、ババアとお嬢ちゃんが俺の事を見下ろしている。


「何をやっているのですか?」


 余りにも"お間抜けな所"を見せてしまい、かなり恥ずかしい。

 俺はサッと立ち上がった。


「どなたかと思いましたが、昨日の方ですか……」


 顔を見せるのは二度目だが、忘れられていなかったのは幸いだろう。


「どうなったんだ?」


 俺は先ほどの間抜けな事などなかったかのように、右手を上げて壁に着け、左手を腰につけ、恰好を付けた姿勢をとる。


「もちろん魔族は滅しましたよ。中を見ますか?燃えカスしか残っていませんが」


 恐ろしい事をあっけらかんと言うものだ。


「いや、やめとくよ」


 俺は手を上げて、降参のような体勢をとる。

 興味がないわけではないが、部屋に入ったらそのまま閉じ込められそうだ。


「ところで、あなたは随分と呑気ですのね」


 こんなところまで忍び込んできておいて、という意味だろう。


「少し見たら帰る予定だったんだけどな。予定が狂ってね」


 そう言うと、ババアが何か考え込みだした。

 なんだ?変なことは言ってないと思うんだが。


「予定。予定ですね。あなた方のおかげで、こちらも随分と予定が狂ってしまいました」


 あなた方と言われるのは心外だ。

 "あいつ"がいなければ俺は何もしなかった――というわけではないか……。


「ところで、あなたは"この国にいる間"は盗賊は廃業だと言っていましたよね?」

「あ、ああ」


 先程までの、悩んでいるような真剣な顔つきと違い、ババアはニコニコと笑っている。

 その様子を見れば、誰だって思うだろう。

 とても嫌な予感がするのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ