アミュス・パメルその5
昨日は眠れないと思ったけどぐっすり眠ってしまったし、普通に朝起きて、普通に授業もしてしまった。
本当に今日、魔族と戦わないといけないのだろうか?
ここまでは普通の一日なんだ。
だけど、私はゼラ学園長に、来るように頼まれていた部屋に向かっている。
色々と納得は出来ない。
例えば、私が学園長になるという話とか……。
でも、とりあえず。
とりあえずだ。
私が学園長になるという話は置いておく。
それでも、ゼラ学園長が魔族を、また学園内に入れて戦うのだとしたら、私が行かないとゼラ学園長が一人で戦うことになってしまう。
それは駄目だ。
正直に言うと怖い。
モンスターを倒したことはたくさんある。
でも、魔族と戦ったことなんてないのだ。
「ここだよね?」
ゼラ学園長に言われていた部屋の前までやってきたのだけど、ここは、前に魔族を入れていた場所だ。
ドアノブを回そうとするが、回らない。
困った。
魔法で鍵をかかっているのはわかる。
これを開けるのは"簡単"だ。
だけど勝手に開けていいのだろうか?
ゼラ学園長は、今日はどこにいるのかわからない。
来る前に少し探したけど、みんな見ていないというのだ。
「いいかな」
ちゃんと部屋の中で待っているように言われた気がするし……。
私は魔法陣を作り出し、鍵を開けて中に入った。
そして、ちゃんと内側から、魔法を使って鍵をかけ直す。
中を見渡す。
広い部屋だ。中央に機械があって、周囲の機器とつながっている。それ以外なにもない部屋だった。
何の装置かはまるでわからない。魔法には詳しいけど、魔道具には詳しくないから。
あまりにも何もないので、私は、なにか本でも持ってくればよかったなあと思ったのだ。
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私が待つのに退屈して、部屋の隅で髪を弄って遊びだした頃に、部屋の扉が開いて、ゼラ学園長が入って来た。
当然、魔族も一緒だ。
ゼラ学園長は、周囲を見渡して、私を見つけ出す。
「アミュス学園長。どうしたのですか?そんな隅っこで。いないかと思いましたよ」
そう言われても、中々来なかったし、私は学園長じゃないし。
「だって……」
私は口をすぼめる。
「もう!言い訳しないでください」
そう言われて、私は立ち上がった。
その辺りで、
「おい!」
魔族が大きい声を上げる。
「なんの茶番だ?」
そういえば、この魔族と戦わなければいけないのだろうか?
なんだか、ゼラ学園長の態度は、そんな感じではない。
ただし、魔族の方は凄く怒っている。
「ほほほ、そう怒らないでくださいまし」
ゼラ学園長が、楽しそうに笑う。
なんだか、煽っているようだ。
「そもそも、そいつは誰なんだ?」
う、うーん。
それはその通りなのだろう。
私はこないだ、この魔族を尾行していたので、知っているのだけど。
自己紹介をするべきだろうか?
「あの……えっと……アミュス・パメルです。よろしくお願いします」
言った後に、何をよろしくするのだろう?と思った。
「ふざけてるのか?貴様らは!」
怒らせてしまったようだ。
私はびっくりして、ゼラ学園長の後ろに隠れる。
「いいえ、ふざけてなどいませんよ」
ゼラ学園長が、私の頭を撫でながら答えた。
「先ほど言ったでしょう。この子はアミュス学園長です。この学園の新しい学園長ですよ」
ゼラ学園長は、そこで一拍止めて、続けて言った。
「そして、あなた達――魔族を滅ぼす者ですよ」
「ええ!?」
驚いた声を出したのは私だ。
その時にはもう、相手の魔族と、ゼラ学園長は"激突"していた。