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ベルテッダ・シュクラその7

 あの学園長のババアの話を聞く限りだと、魔族を倒すために騙していたようである。

 まあ、流石に国の長が裏切っていたら笑い話にもならないからな。


「知ってたのか?」


 小さい声で、隣のピエロに話しかける。


「どうだろうね」


 微妙な答えだ。

 しかし、知っていなければ、学園長に伝言なんて頼まないだろう。


「それよりほら、もうあの子が帰って行くようだよ。チャンスさ」


 そのようだが、不自然だろう。

 二人で来たのに、一人だけ残るだなんてよ。

 これって、"バレてる"ってことだろ?


「ベルテッダ」


 初めてだ。

 このピエロから名前で呼ばれたのは。


「ありがとう」


 なんだかこそばゆい。

 感謝されるのも悪くないかもしれない。

 そう思っていると、ピエロは消えてしまった。


 お早いお帰りだが、それでも頼み事くらいは済ましてやろう。


 そんな俺にちょうど声がかかる。


「どなたですか?盗み聞きとは感心しませんね」


 俺は盗賊らしく、闇から、ふらりと姿を現した。


「一応聞かせていただきますけど、どこのどなたですか?」


 それは知らねえだろうな。

 あんたと違って俺は有名人ではないし。


「あー……そうだな。しがない盗賊だよ」


 俺は、あのピエロの代理人だ。

 少しだけ、ピエロの真似をしてやろうと思う。

 あのピエロは、人をからかうような言い方をするのだ。


 そう思っていると、学園長の手が動く。

 危険だ。


「まあ、待て待て。この国にいる間は、盗賊は廃業させられてるんだ」


 なんだか情けない感じになってしまった。


「それで、その盗賊さんが何故盗み聞きをしていたのですか?」


 そこはどうでもいいだろう。

 いや、この婆さんからしてみると、大事な事ではあるのか。


「俺には用はないんだけどな。なんか都合が悪いみたいでよ」

「あなた以外にも誰かいたのですか?」

「まあ、そうだな」


 別にそこは認めていいだろう。


「そいつから伝言だよ。"片方は僕に任せて欲しい"だってよ」

「はぁ、そうですか。どういう意味でしょう?」


 そう言われても、俺にだってわからないのだから、


「俺が聞きてえよ」


 こう答えるしかない。


「その方はどのような方ですか?」


 妙に俺の"相方"に、興味を持っているように思える。

 つまり、学園長様には、さっきの言葉の意味がわかったのだろう。

 ということは、俺の役割はもう終わりだ。


「ああ、それはそう思うよな。そいつはな、ピエロだよ」


 だから少しだけ、からかって行こう。


「は?」


 それはそうなるだろう。

 実物を見れば、わかるのだけどな。


「俺はそれ以上知らねえな」


 よく考えると、それしか知らない。

 それはなんだか少し、寂しいものだ。


「それじゃあな。"学園長"さん」


 言うだけ言って、さっさと帰ることにする。


「あら、話を聞いていなかったのですか?」


 呼び止められたのだが、なんのことだろうか?


「私はもう学園長ではありませんよ」

「ああ、そうだったな」


 素っ気なく言ったつもりだが、凄く動揺した。

 本当に、あの"おまぬけな少女"に学園長の座を譲る気なのだろうか?

 何かの比喩か、振りだと思っていた。


 それとも俺を動揺させて、後ろから捕まえる作戦だろうか。

 あれ?今、俺ちゃんと歩けてるか?

 

 いや、大丈夫だ。

 あの婆さんは追ってくる気配もない。

 

 流れ的に、自然に帰ればいい。

 それだけだ。

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