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グザンその5

 


     ♦



「おお、貴様。12番だったか?名前はなんというんだ」


 見た目だけで選んで、拷問部屋まで連れてきたこの男なのだが……。

 体が震えているし、目が怯えている。

 見た目に寄らず、小心者なのではないか?

 それならそれで好都合なのだが。


「ベ……ベナミスです」

「ベナミスだけではないだろう?」

「ベナミス・デミライト・キングです!」


 なんだそれは。随分と大それた名前だ。


「ははっ!随分と立派な名前じゃあないかベナミス」

「あ、ありがとうございます!」


 ベナミスは、俺様に向かって、膝をついて頭を下げた。

 なんだか必死な様子に、笑いをこらえられなくなる。


「はーっははっ!それでベナミス君は。この国で何をやっていたのかな?」


 兵士の様な風貌だが、兵士ということはないだろう。

 兵士は俺様が皆殺しにしてやったのだ。


「はい!城でコック長をやっていました!」


 それを聞くと俺様は更に大きく笑ってしまう。


「ひーっひひ!笑わせるな。お前は、その体と、その名前でコックをしていたというのか!面白い奴だな」

「ありがとうございます!」


 何がありがとうございますなのだろうか。必死過ぎである。

 だがちょっと待てよ……コック長だと?


「という事は、お前は料理が上手いんだな?」

「はい!それはもちろん!」


 なんという偶然だろう。

 俺様が革命軍のリーダーに選んだこいつが、この国のコック長だったなんて。

 これは俺様の運命だ。こいつがリーダーに向いて無さそうなら、こいつは殺すつもりだった。

 そして、また別の奴にしようかと思っていたのだが……もういい。一人目で当たりを引いたのだ。革命軍のリーダーはこいつに決めた。


「なんで呼ばれたかわかるか?ベナミス?」


 わかるやつはいないだろう。

 だが、あえて聞いてやる。


「いえ、全く……」

「ふうううう。簡単な話だ。奴隷を裏切れ」


 わかりづらく言ったのはわざとだ。反応をみたい。


「いえ、それは……」


 なんだ。こいつにも仲間意識があるのか。


「まあ、話を聞け。奴隷達にとってもいい話だ。革命軍を作るんだよ」

「何故ですか?」

「ごっこでいいんだ。その革命軍は、奴隷達の息抜きだ。希望が少しあったほうが、よく働くだろう人間は?」

「それを俺に作れということですか?」


 おっと、そこそこ頭は回るようだ。


「よくわかってるじゃあないか。お前がやらなくてもいいんだぞ?別の奴にやらせるからな」


 やらない場合は殺すがな。と心の中で続けた。


「やります!やらせてください!」


 ベナミスの必死さを見るに、やらなかった場合どうなるか、察しているのだろう。

 馬鹿ではないことは、ほんとうにいいことだ。


「そうかそうか。よーくわかった。それじゃあ……」


 ベナミスが、ホッとしているのがわかる。

 これで終わりだと思ったのだろう。


「12番を鎖で繋げ!」

「何故ですか!」


 これから酷い事をされると悟ったのだろう。

 何故って?それは簡単だ。


「上下関係ははっきりさせて置かなければいかんだろう?」


 絶対に裏切らないように、恐怖を体に刻み付けないとな。

 ついでに、ボロボロのこいつを見せつけてやれば、奴隷達にもいい薬になるだろう。


 先に全てを話したのは、後になったら、俺様の話なんて聞く余裕がなくなるからだ。


 そして、拷問が始まった。

 


     ♦



 拷問の内容は様々だったな。爪を剥いだり、焼きゴテを体に当てたり、逆さまにして水桶につっこんでやったり。

 そうして、今の従順なベナミスの出来上がりと言うわけだ。

 もっとも今更な話だが、拷問などしなくてもこの男は従順だっただろうけどな。はっはっはっ。


 そういえばこの時は、鞭ではなく、槍で拷問していた。

 それに、もっとスリムだったし、もっと強かっただろう。

 目の前にある、"こんな"ケーキを食べていたら、それは太ってしまうのも仕方がないだろう。

 でも、別にいいのだ。

 どうせもう戦うことはないのだし。


「ふぅむ……どうだ?お前も食うか?」


 これは別になんてことはない一言だ。

 "気にした"わけではない。


「いえ、私は味見したので」

「そうか」


 つまらん男だ。

 拷問していた時は、あんなにも情けなく、「許してください」「やめてください」と喚いてくれたというのに。最後には、俺様の靴を喜んで舐めていたくらいだ。

 

 ふうううう。

 しかし、旨い。

 このでかいケーキは、一生無くならないのではないのかと思う程だ。

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