エンディング
僕達は暗い通路を駆け抜ける。
「やっぱりなぁ……」
ふと、僕は小さくそう呟いた。
「ドウシタ?」
隣で通路の狭さに苦戦しているジェミリオンが反応した。
通路は思ったよりも広いが、体の巨大なジェミリオンからしたらぎりぎりである。
「ああ、いいんだ。こっちの事だから」
それは、僕が元の世界に戻れなさそうという話である。
確かに、女神は魔王を倒したら元の世界に戻すなんて言っていなかった。
多分きっと、もう二度と戻ることは出来ないし、僕はずっとこの世界で生き続けなければいけないのだ。
そんな気がする。
でもまあ、僕はこの世界が結構好きだし、どこか静かな場所で暮らせばいい。
これから所謂スローライフが始まるとでも思えば、悪くないのかもしれない。
そんな、前向きな事を考えていたら、出口に辿りついた。
「壊してもらっていいかな?」
出口は、僕が固く閉ざしてしまっている。
「アア」
ジェミリオンは短く返事をすると、軽々しく出口を破壊した。
僕はすぐに外に出ると、周囲の確認をする。
「ついてるね。誰もいないみたいだ」
ここは、かなり離れの方である。
兵達は魔王城の方へと向かい、人は残っていなかった。
「どうしたんだい?早く来なよ」
しかし、ジェミリオンは通路から出てこなかった。
「オレヤッパリイケナイ」
ジェミリオンは暗い通路の中から、姿も現さずに声だけを届けてくる。
「なんでだい?」
僕は聞く。
「オレバケモノ」
僕はそれを聞いて笑った。
「ははっ!それを言うなら僕も化け物さ」
僕は通路を降りて行き、ジェミリオンの手を引っ張った。
「さあ、行こう!」
もう、ジェミリオンが抵抗することもなかった。
「そのうち、僕の友達を紹介するよ。皆いい奴ばかりだからさ」
そんな他愛もない会話をしながら、僕はこの世界のどこかへと消えて行ったのだった。
終




