表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

223/228

ベナミス・デミライト・キングその4

 誰が、なんの恨みがあってかはわからないが、俺はよくわからない"通路"に閉じ込められてしまった。

 敵の攻撃にしてはぬるい。

 俺を後ろから攻撃することが出来たのに、すこし押されただけだ。

 まさに、俺をここに閉じ込める。そのためだけに行われた行為のようだった。


 そして、何故か1本だけ松明が用意されている。

 他の壁に立てかけられている松明は消えているのだ。

 まるで、俺に使えと言わんばかりである。

 

 この地下通路の先に何があるのかはわからないが、俺が落とされた入口の扉がどうあっても開かない以上、先に進むしかないのだろう。


「仕方ないか……」


 俺はそう呟くと、松明を持ち、暗く先が見えない通路へと進みだした。



     ♦



 それなりに長い時間を歩いた。


「いったいどこまで続くんだ……」


 石で作られた通路の景色は変わらず、俺の足音以外の音もしない。

 やっぱり戻ろうかとも思うが、戻ったところで、いつまで閉じ込められるかわからない。

 つまり、結局どれほど弱音を吐こうと、進むしかないのだ。


 何気なく上を見上げた。

 そもそも、一体何に使われる通路なのかはわからないが、それなりに大きい通路であり、大柄な俺でも天井はぎりぎり手が届くかどうかくらいだ。

 この天井の上――地上では戦いが行われているのだろう。

 参加したいとは思わないが、仲間達の無事は気になる。


「うわっ!」


 何かに足を取られ、転倒してしまった。

 上に気を取られていたし、ずっと見栄えの変わらない通路なので油断してしまった。


「な、なんだ……松明は……無事か、良かった」


 俺は急いで起き上がると、松明を拾い、躓いたものを照らした。


「うおっ!」


 俺の足に引っかかったもの、それは干からびた死体だった。

 それも一人ではなく、何人ものだ。

 何人かは随分と上等な服を着ており、何人かは兵士の鎧を着ている。。


「これは……」


 王族とその護衛だろう。

 つまりこの通路は、王族が使う、外へと続く隠し通路というわけだ。


「どうすればいいんだ……」


 この通路が俺の考えた通りであるのなら、"王族の部屋にでも繋がっている"のだろう。

 それはつまり、外には出れるということだ。

 しかし、そこは魔王城である。

 本来であれば、そこは目的地ではあるのだが、正直に言うと行きたくない。

 

 俺が躊躇っていると、"ずしん"と地鳴りが起こり、ぱらぱらと天井の破片が降って来る。


「やばいな。生き埋めだけはごめんだぞ」


 上で何が起きているのかはわからないが、激しい戦闘が行われているのは間違いない。

 使われていない古い通路のようだし、必ずしも潰れないとは限らないのだ。

 迷っている暇はなさそうである。

 

「行くしかないか……」


 俺は諦めて、通路を再び進みだしたのだった。

 少し、早足で。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ