ベナミス・デミライト・キングその4
誰が、なんの恨みがあってかはわからないが、俺はよくわからない"通路"に閉じ込められてしまった。
敵の攻撃にしてはぬるい。
俺を後ろから攻撃することが出来たのに、すこし押されただけだ。
まさに、俺をここに閉じ込める。そのためだけに行われた行為のようだった。
そして、何故か1本だけ松明が用意されている。
他の壁に立てかけられている松明は消えているのだ。
まるで、俺に使えと言わんばかりである。
この地下通路の先に何があるのかはわからないが、俺が落とされた入口の扉がどうあっても開かない以上、先に進むしかないのだろう。
「仕方ないか……」
俺はそう呟くと、松明を持ち、暗く先が見えない通路へと進みだした。
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それなりに長い時間を歩いた。
「いったいどこまで続くんだ……」
石で作られた通路の景色は変わらず、俺の足音以外の音もしない。
やっぱり戻ろうかとも思うが、戻ったところで、いつまで閉じ込められるかわからない。
つまり、結局どれほど弱音を吐こうと、進むしかないのだ。
何気なく上を見上げた。
そもそも、一体何に使われる通路なのかはわからないが、それなりに大きい通路であり、大柄な俺でも天井はぎりぎり手が届くかどうかくらいだ。
この天井の上――地上では戦いが行われているのだろう。
参加したいとは思わないが、仲間達の無事は気になる。
「うわっ!」
何かに足を取られ、転倒してしまった。
上に気を取られていたし、ずっと見栄えの変わらない通路なので油断してしまった。
「な、なんだ……松明は……無事か、良かった」
俺は急いで起き上がると、松明を拾い、躓いたものを照らした。
「うおっ!」
俺の足に引っかかったもの、それは干からびた死体だった。
それも一人ではなく、何人ものだ。
何人かは随分と上等な服を着ており、何人かは兵士の鎧を着ている。。
「これは……」
王族とその護衛だろう。
つまりこの通路は、王族が使う、外へと続く隠し通路というわけだ。
「どうすればいいんだ……」
この通路が俺の考えた通りであるのなら、"王族の部屋にでも繋がっている"のだろう。
それはつまり、外には出れるということだ。
しかし、そこは魔王城である。
本来であれば、そこは目的地ではあるのだが、正直に言うと行きたくない。
俺が躊躇っていると、"ずしん"と地鳴りが起こり、ぱらぱらと天井の破片が降って来る。
「やばいな。生き埋めだけはごめんだぞ」
上で何が起きているのかはわからないが、激しい戦闘が行われているのは間違いない。
使われていない古い通路のようだし、必ずしも潰れないとは限らないのだ。
迷っている暇はなさそうである。
「行くしかないか……」
俺は諦めて、通路を再び進みだしたのだった。
少し、早足で。




