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ジェミリオンその4

 俺がピエロの手を取ると、ピエロは嬉しそうに俺の手を引いて行く。

 そして、俺は長い事動かしていなかった体を動かして、ピエロへと着いて行くのだ。

 

「あっ……」


 だけど、少ししてピエロは急に立ち止まった。

 

「ごめんごめん。少し忘れてた事があったよ」


 急にどうしたのだろう。


「先に行っててよ。すぐに戻るからさ」


 そう言ってピエロは勝手にいなくなってしまったのだ。

 先に行っていろと言われても、行き先すら告げられていないのに。


 だが、俺は一人になっても歩き出した。

 もう動くこともなく、朽ち果てようと思っていたのに。

 それでも、また動く事に決めたのだから。

 


     ♦



 大きな足音を立てて、俺は魔王城を上っていく。

 俺の姿を見て、魔族は驚く。


「なんだ!?魔王様の実験体か?」


 中には、俺の見知った魔族もいたが、化け物となってしまった俺を、俺と認識できる奴はいなかった。

 だが、そんなことは気にしない。

 

 どこに集合など言われていないが、俺は魔王城の中核。魔王の間を目指していた。

 俺を止める奴はいない。混乱しているのもあるだろうが、魔王の実験体だと思われているからだろう。実際にそうでもある。


 そして、なんの問題もなく、魔王の間の前へと着いてしまった。

 ピエロの姿は相変わらず見当たらない。

 だが、俺は迷いながらも門を開けた。


 門を開けて、まず目に映ったのは、俺と同じ化け物達である。

 そして、いつも通り、化け物達の後方にある玉座に魔王は座っていた。


 魔王の間がこの様子では、俺が止められなかったのもよくわかる。


「ん?おお!ジェミリオンではないか」


 魔王がさらりと言った。

 正直に言うと、俺の事など忘れていると思っていた。意外である。

 それに、こんな状況だというのに、何故だか機嫌がいい。


「何をしにきたのだ?」


 俺が何も返事をしなくても、魔王は更に続けて問うてくる。


 しかし、それは俺が聞きたいくらいだ。

 何故こんなところに来てしまったのか、俺にもわからない。

 それは、ただ、生まれて初めて出来た友人と約束したからだ。

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