ジェミリオンその4
俺がピエロの手を取ると、ピエロは嬉しそうに俺の手を引いて行く。
そして、俺は長い事動かしていなかった体を動かして、ピエロへと着いて行くのだ。
「あっ……」
だけど、少ししてピエロは急に立ち止まった。
「ごめんごめん。少し忘れてた事があったよ」
急にどうしたのだろう。
「先に行っててよ。すぐに戻るからさ」
そう言ってピエロは勝手にいなくなってしまったのだ。
先に行っていろと言われても、行き先すら告げられていないのに。
だが、俺は一人になっても歩き出した。
もう動くこともなく、朽ち果てようと思っていたのに。
それでも、また動く事に決めたのだから。
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大きな足音を立てて、俺は魔王城を上っていく。
俺の姿を見て、魔族は驚く。
「なんだ!?魔王様の実験体か?」
中には、俺の見知った魔族もいたが、化け物となってしまった俺を、俺と認識できる奴はいなかった。
だが、そんなことは気にしない。
どこに集合など言われていないが、俺は魔王城の中核。魔王の間を目指していた。
俺を止める奴はいない。混乱しているのもあるだろうが、魔王の実験体だと思われているからだろう。実際にそうでもある。
そして、なんの問題もなく、魔王の間の前へと着いてしまった。
ピエロの姿は相変わらず見当たらない。
だが、俺は迷いながらも門を開けた。
門を開けて、まず目に映ったのは、俺と同じ化け物達である。
そして、いつも通り、化け物達の後方にある玉座に魔王は座っていた。
魔王の間がこの様子では、俺が止められなかったのもよくわかる。
「ん?おお!ジェミリオンではないか」
魔王がさらりと言った。
正直に言うと、俺の事など忘れていると思っていた。意外である。
それに、こんな状況だというのに、何故だか機嫌がいい。
「何をしにきたのだ?」
俺が何も返事をしなくても、魔王は更に続けて問うてくる。
しかし、それは俺が聞きたいくらいだ。
何故こんなところに来てしまったのか、俺にもわからない。
それは、ただ、生まれて初めて出来た友人と約束したからだ。




