ネフェストその3
俺は窓から外を眺める。
俺のいる王の間は、このでかい城の上の方にあるので、遠くまで見渡すことが出来る。
結界の外側は、人間共で埋め尽くされていた。
この城の裏側までもだ。
"人間は中には入れない"のだから、こうなるのは当然だろう。
「ゴミ共目が」
俺はそう呟くと、人間共から目を離し、結界の中へと目を向けた。
この城は、元は人間共が使っていたものだ。
一番最初に占領した王国を、そのまま使っている。
まあ、多少は人間の奴隷共を酷使して修繕したが。
だから、城下町の様なところもある。
そこに魔族やモンスターも潜ませてある。
人間共が、俺の作った完璧な"結界を破れるはずはずはない"が、準備をしておくに越したことはない。
俺は更に視線を移す。
城の裏手だ。
この城は、人間共が作った城だ。
ここの王族は随分と小心者だったらしい。
この部屋から外へとつながる、逃走用の"隠し通路"があるのだ。
それは、結界の中ではあるが、限りなくその外に近い場所へとつながっている。
俺はこの王国を滅ぼしたときに、その通路を通っているこの国の王を殺してやった。まあ、それはいい。
人間共が詳しく調べれば、見つけることも出来るだろうが、戦の最中に見つかることはないだろう。
もちろん逃げる気はないが、備えがあるに越したことはない。
「さて、実験体たちの様子でも見に行くか」
俺は窓から目を離して、その場を離れようとした。
その時だった。
何かが割れるような大きな音はしたのは。
それが何かは、振り向かずともわかる。
だが、俺は振り向きたくなかった。
その事実を認めたくなかったから。
「魔王様!」
やめろ!言うな!と叫びたい。
「結界が破られました!」
「何ぃ!」
しかし、その事実だけは隠しようがないのだった。
窓の外を見ると、人間共が勢いよく突っ込んでくるのが見える。
そして、結界の中にいる魔族やモンスター達と戦い始めてしまっている。
「くそ!」
俺はそう毒づくと、急いで走り出した。
調整不足だが、俺の研究の成果を解き放つのだ。