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エニール・ミーンその7

「これ、作ってきたの!」


 そう言って取り出したのは、当然仮面だ。

 これを渡しに来たのだから。


「へえ、確かにお願いしたけど……」


 ドキドキする。

 「変な仮面だね」と言われたらどうしよう。


「随分上手なんだね」


 褒められた。嬉しい。

 作るのは大変だったけど、この言葉を聞けただけでも嬉しい。。


「ありがとう!」

「ただ……」


 なんだろう。彼は悩んでいるようだ。


「少し、人間っぽ過ぎるかな」

「どういうこと?」


 何が言いたいのかさっぱりわからない。

 まず、そんなに人間ぽいとは思わない。しょせん仮面は仮面だ。

 次に、人間ぽいとだめなんだろうか?なんの不都合があるのかわからない。


「人間ぽいと駄目なの?」

「やっぱり顔を隠しても、わかる人はわかるんじゃないかなと思ってね」


 そんなに顔を隠したいんだろうか?

 綺麗な顔なのに。もったいない。


「そうだね、やっぱり……エニール。もらいものなのに悪いんだけど。この仮面。少し弄っていいかな?」

「全然いいよ!」


 上げるものなのだし、全然構わない。


 あたしの了解を得ると、彼はどこかへと歩き出した。

 そして、果物の木の前で止まった。

 彼はその木から、手慣れた感じで、果物の木から果物を取った。


「どうするの?」

「この辺にはそこそこいるからね。少し詳しくなったんだ」


 その果物に何かあるのだろうか?


「この果物は色付けに使えるんだ。言い方を変えれば、しつこい染みのようなものだけどね」


 そう言って、彼は笑った。なんだか、そんな風に笑うのは珍しく感じた。


「ふーん」


 あたしは、あまり興味がなさそうな返事をしたんだけど、その果物を何に使うのかはわかってしまった。

 その果物で、仮面に色を付けるというわけだろう。


 彼は悩んでいるようで、すぐには手を付けなかった。

 だけど、少しすると、何かに閃いたようで、仮面に迷いなく色を付けていく。

 横から見ていると、色を付けているというより、何かを書いているようだ。

 でも、何を描いているかは全くわからない。


「できた」


 できたみたいだ。

 彼は、得意気な顔をしている。自信があるのだろう。

 それなら聞いてあげないといけない。


「何を描いたの?」


 彼は待ってましたと言わんばかりに、あたしに仮面を見せた。

 その仮面の目の所や、頬に、それぞれ模様がついている


「これは……ピエロだよね?」


 見たことはないけど知っている。まだ教会にいた頃に、本で読んだことがあるから。


「そうだね。さっき思いついたんだ。中々に洒落が聞いているだろう?」


 どのへんが洒落ているのかわからない。


「わからないという顔をしているね。そうだな……所詮、僕は道化という事さ」


 やはりよくわからない。

 だけど、これはちょっと……。


「不気味じゃない?」


 少し迷ったけど、はっきりと言ってしまう。

 何が面白いのか、彼は"クスクス"と笑った。


「だからいいのさ。それくらいインパクトがある方がいい」


 なんだかわからないけど――。


「気に入っているのならいいや」


 本人がいいなら、それでいいのだろう。


「ふふっ、それでは改めて、ありがたくいただくよこの仮面」

「うん。どういたしまして」


 って言ったけど。仮面をあげたのはお礼だ。

 なんだか、あたしが親切心で仮面を作ってあげたみたいになってしまった。

 それでもいいのだけど……まあ、いいか。


「ところで、今日はいつもより長く居るね。そろそろ戻った方がいいよ」


 そういえばそうだ。

 彼に話したいことが沢山あったから、長居しすぎた。


「う、うん。ありがとう!」

「果物はいるかい?」


 彼はそう言って、果物を差し出してきた。

 でも今日受け取れない。ナセじいに持って帰ったら、怪我が治ってないのに外に出ていることがバレてしまうから。


「ううん!今日はいいや!ありがとう!それじゃあまた」

「うん、また」


 あたしは彼の言葉を聞くと、急いで帰ったのだった。

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