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モルディエヌス・エイレストその13

 我々の国は、魔王軍との戦いに勝利し続け、快進撃を続けているという。

 だが、私はそのことは心配していなかった。何故なら母様がそうなると言っていたのだから。

 "これからも"、私は母様の言う通りに生きて行けばいいのだ。

 


     ♦



 私がいつものように母様と過ごしていると、扉が急に開き、私は身構える。

 今日は誰もここには来ないはずである。ピエロが来たとしても、扉からは入ってこない。

 だが、私はすぐに警戒を解く。

 扉から入って来た人物はオージェリンであった。


「オージェリンか」

「私が来てはいけないの?」

 

 駄目ではないが、"あの日"以来、この場所に予定にない訪問をオージェリンがするのはこれが初めてである。


「ああ、なんでもないんだ。何をしに来たのだ?」

「夫に会いに来るのに、理由がいるのかしら?」


 最近のオージェリンはずっとこんな調子である。

 妙に私に媚びているのだ。

 だが、その理由はわかっている。


「今日は何を持ってきたんだ?」


 だから、私は聞く。

 間違いなく、何かを持ってきているはずである。

 そして、その中に毒が入っているのも、もちろん私は気付いている。

 "だから、ピエロが処理している"のだ。


「いいえ、今日は何も持ってきていないわ」

「珍しいですね」

「ああ」


 それは、つまりどう取るべきだろう。

 諦めたのだろうか?


「そうか、ならば、こちらに来るといい」


 最近のオージェリンは言わなくても"こちらまでやってくる"。

 たった少しの距離だが、その距離をオージェリンが詰めてくることは前にはなかった。

 その理由は、私にはわか――らない。


「行かないわよ。そんな――臭いところ」


 ああ、駄目だ。


「オージェリン。それは駄目ですよ」


 母様だって駄目だと言っているのだ。


「オージェリン!」


 だから、私は声を荒げて妻の名を呼んだ。


「もう、うんざりなのよ!」


 だが、オージェリンも声を荒げてきた。


「オージェリン落ち着きなさい」


 母様がオージェリンをなだめるが、"効果はない"。


「いい加減を現実を見なさいモルディ!」


 "何の事だかわからない"が、とても腹が立つ。


「オージェリン、それ以上口にするようなら、私はお前を斬らなければならない!」


 脅しではなく、剣へと手を伸ばす。


「あなたの母様は――死んでいるのよ!」

「あああああああ!」


 私は叫びながら、オージェリンへと斬りかかった。

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