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ウィグランド・アジェーレその2

 エイレスト王国からの援軍が来てから1週間が経った。

 エイレスト軍は数もさることながら、良く練兵されていた。

 中でも、やはり軍団長のゼンドリックの強さには目を見張るものがあり、我が軍のベナミスにも匹敵する強さを持っているかもしれない。

 更に、ゼンドリックの直属の部隊も強く、彼らのおかげで眼前の魔王軍との戦いは楽になるどころか、撃退して、魔王領を大幅に取り戻せるかもしれない。


「というわけなんだ」


 私は夜に自室で、軍師のキルエスと、歌姫のウルスメデス相手に、そんな感じで戦況を熱く語った。


 ちなみに、何故ウルスメデスが私の部屋にいるのかわからない。

 夜になれば、一人で部屋でぐでぐでとしている事が多いのだが、最近では私の部屋に押しかけて帰る事もたまにはあるようになった。

 彼女は、昼間は純粋無垢なウルスメデスだが、夜になり人がいなくなると本性を表す。

 この国で彼女の本性を知っているのは、私とキルエスだけである。


「ふーん……」


 そして、私の話に対して、私の寝所に寝転がりながら、ウルスメデスが驚くほど興味がなさそうに返事をした。


「へぇ……」


 更に、キルエスもまた同じようにどうでも良さそうに返事をする。

 こちらはウルスメデスと違い、興味がないのではなく、既に知っているからの返事であろう。


「そんなもんよりもっと面白い話があんだろ?」


 ウルスメデスがそう言った。

 そんなもんと言われるのは大変心外であるし、その面白い話というのは、あの話のことなのだろうが、"あの話"はしたくないのだ。


「そうだよ。どうするのさウィグランド」


 ウルスメデスは面白がっているのだろうが、キルエスは真面目に聞いている。

 真面目な話なのだ。エイレスト王国との同盟、及びエイレスト王国の姫との婚姻というのは。

 俺も一国の王なのだから、国の利益を考えるのであれば、婚姻しないという選択肢はない。

 だが、大きすぎる問題があるのだ。


「いや、相手の姫が10歳って言うのは……駄目じゃないか?」


 私の言った言葉を聞いて、ウルスメデスがぎゃはははは!と下品に笑う。


 昔は結婚には興味がなかった。しかし、歳を取ると考えも変わるものである。魔族との戦争で多くの親族が死んだという背景もある。つまり、私だって今は結婚には興味はある。

 だが、幼女趣味はないのだ。

 エイレスト王国の王は私より若いのだし、その姫ともなれば、若いのは仕方がないと思う。

 だけど、限度があるだろう。


「いいじゃねーか10歳だって。案外骨抜きにする夜の技術を仕込まれていて、"いい"かもしれないぜ」


 ウルスメデスは相変わらず息をするように下品な話をしだす。やめてほしい。


「それが冗談ではないんだよね。ウルスメデス」


 キルエスが何故か下世話な話に乗り出す。


「どういうことだ?」

「方法がどうあれ、アジェーレ王国に自分達の血を入れたいのさエイレスト王国は」


 血というのは血統ということだろう。

 それってもう、俺が10歳の姫との間に子供を作る前提の話ではないか。


「そして、ゆくゆくはアジェーレ王国もエイレスト王国に取り込みたいんだろうね」


 ……そうだったのか!


「それってなんか問題あるのか?」


 ウルスメデスがあっけらかんと言った。

 いや、問題あるだろう。


「ないね。大陸の国が一つに統一されるだけさ」


 ないのか?キルエスが言うなら問題ないのか?


「いや待て。それではアジェーレ王国がなくなるではないか」


 それは困る。


「王国はなくなるけど、アジェーレ領となって残るだろうね」


 なるほど、それなら問題はないかもしれない。


「だけど駄目だろう」


 だが、やはり駄目のようだ。


「僕はエイレスト王国の王に会ったことはないけど、平気で周りの国を吸収し続ける国王が純粋にいい人間とは思えないからね」

「確かに気に食わねえわな」


 つまるところ、キルエスもウルスメデス反対という事だろう。

 そういうことであるなら、


「今回の婚姻は受けなくていいってことなんだな」


 そういうことであるのだろう。

 私は喜んだ。流石に10歳の姫と結婚は駄目だろうと思っていたから。


「いや、受けざる負えないだろうね」

「そうだぞ、今の国の状況を考えろよ」


 キルエスはともかくとして、何も考えていなさそうなウルスメデスには言われたくないものである。いや、俺よりは考えているかもしれないが。


 しかし、


「じゃあ、今の話はなんだったんだ?」


 という事になる。


「ウィグランドには、国の状況と相手の考えを、念を押して教えておかないといけないからね」

「天然だからなあ」


 注意しろと言いたかったわけだ。

 そんなに私は王として頼りなさげだろうか?


 だがなんにせよ、結局のところ私が10歳の子供と結婚をするのは避けれなそうである。

 その事実を前に、私は深いため息をついたのだった。

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