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シェラミエ・エイレストその7

 私がモルディに嫁いでから10年が経ちました。

 そのたったの10年で、小国であったエイレスト王国は大陸一の大国になってしまったのです。


 実は、モルディはお城の場所は変えていません。

 ですが、お城自体はどんどんと大きくしてしまい、今となっては元々あったエイレストの領地よりも、今のエイレスト城の方が大きいくらいです。

 でも、モルディはお優しい方なので、私の育てた花達がいる庭は残してくださいました。


 国が大きくなるのは良いことかもしれませんが、最近は悪い事ばかり起きるので、この先が心配でなりません。

 例えば、魔王軍が現れたり、お義母様が病気で倒れたり。何故こんなにも悪い事ばかりが重なるのでしょうか。


 だけど、お義母様の容態は良くなったとモルディに言われましたので、ホッとしています。

 何故だか、離れで療養中のお義母様に会いに行くなと言い聞かされたのですが、そう言うわけにもいきません。

 だから私は、侍女のデリアに、娘のピリフィルと、生まれたばかりの息子であるストラエヌスを預け、お義母様の元を訪れようと、療養所に向かっている最中なのです。


 

     ♦



 私はゆっくりと歩いていた。

 何故ゆっくりかと言えば、お腹が大きいからである。そう、私は3人目の子を妊娠しているのである。

 こんな風に出歩いていては、またデリアに叱られてしまうかもしれないけど、今日はデリアも了承済みである。


 目的地である、お義母様のいらっしゃる療養所は城の中にはない。

 安静に出来るようにと、城の裏に療養所をわざわざ作ったのだ。これはオージェリンさんの提案だったらしい。

 それで実際に、お義母様の体調も良くなったのだから正解だったのだろう。


 しかし、城の裏門から外に出て、療養所へと向かう最中に、私は呼び止められてしまう。


「王妃様。どうなされましたか?」


 言うまでもなく、お義母様の療養所を守っている衛兵だろう。


「お義母様の体調が良くなったと聞きましたので、様子を見に参りました」

「そうでしたか。ですが、国王様に誰も通すなと堅く言われていまして……」


 もちろん。それは私も聞いている。


「王妃である。私の言う事が聞けないというのですか?」


 あまり偉ぶるのは好まないのだけど、こういう場合でならいいだろう。


「はっ!しかし……」


 衛兵は、王妃である私と、王であるモルディの命令に、板挟みにされて困ってしまっているようだ。少し悪い事をしたかもしれない。


「国王には私の方から言っておきますので」

「は、はぁ……」


 衛兵は困った顔のまま黙ってしまった。


「それでは、通らせてもらいますね」


 だから、私は勝手に通り過ぎてしまう。

 でも、今度は衛兵も、私を止めることはなかったのだ。


 

     ♦



 しかし、衛兵のいる場所が随分と遠いと感じた。

 お義母様の療養所までは、まだ歩いて10分以上はあるはずだ。

 私などは、今は、ゆっくりと歩かないといけないので、もっと時間がかかるくらいだ。

 少しの時間歩いて、やっとお義母様のいる療養所が近づいてきた頃だった。

 私の肩が乱暴に掴まれ、無理矢理振り向かされてしまったのは。


「きゃっ!」


 私は焦り、驚いたが、私の肩を掴んだ人物を見て、すぐに安堵した。


「モルディ」

「すまない。驚かせるつもりはなかったのだが……」


 モルディはすぐに私の肩から手を離す。


「すいません。どうしても、お義母様の無事な姿が見たくて」


 特に何かを言われたわけではないけど、私は自分から先に謝った。


「そうか。だけど、すまない。医者が言うには、元気にはなったが、伝染するかもしれないそうなんだ。母様本人も、しばらく静かに暮らすのもいいと言っていた」


 お義母様のお気持ちはともかく、伝染するかもしれないのであれば、確かにそれは気を付けなければならないかもしれない。

 だけど、体調が良くなる前は、そんな事は言われなかったと思うのだけど。


「さぁ、部屋へ戻ろう。今日は、君やピリフィル達と過ごすよ」


 そう言って、モルディは私の手を取った。

 そして私は、そう言われたら、モルディの言う通りにするしかないのだ。

 だから、お義母様には会えなかったけど、モルディと二人で手を繋いで、その場を去ったのだった。

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