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オージェリン・ヴァスティーナその3

 人生に失敗はつきものだ。

 だけど、それが運によるものでは納得のいくものではない。

 それでも、人は進んでいかないといけない。

 だから、私は新しい計画を立てたのだ。

 


     ♦



 私は、モルディエヌスの元へ教師として通い詰めた。

 皇女としての教育は完璧に受けて来たので、なんの教師でもよかったが、得意な歴史にしておいた。

 別に歴史が好きなわけではなく、歴史の偉人たちの失敗と成功に興味があったから自然と得意になってしまったのだ。

 子供は好きじゃあないが、モルディエヌスは素直な子供で楽なものだった。

 本当に、"お義母様"は良くやったものだ。

 おっと、まだお義母様ではなかった。


 当然、私の計画はモルディエヌスを王に仕立て上げることだ。

 死んだセレームの弟達でも良かったのだが……計算だ。直感ではない。

 間違いなくモルディエヌスを王にした方がいいのだ。


 ただ、困ったことがあり、モルディエヌスにはシェラミエという婚約者がいた。

 奪うのは簡単だが……やめた。

 もう婚約は諸国に知れ渡っているし、私は未亡人だ。あまり良い噂は立たないだろう。

 それに、デヌティエ王国をエイレスト王国に取り込んでしまえば都合がいい。


 だから、私は二人の間柄を黙って見ていたのだ。

 


     ♦



 それから3年が経った。

 その間に、私は"必要な事"は済ませていた。


 例えば、私の父がやっと死んだ。

 順調に長男のレーンが国王を継いだ。

 これは、仕方がない事だろう。


 それから、モルディエヌスをハレスレダ王国の王にする準備も終わった。


 そして今日、モルディエヌスはとりあえずエイレスト王国の国王となるのだ。

 それはつまり、婚姻の儀が行われることとなる。

 別に構わない。正妻の座くらいくれてやればいいのだ。


 そうして、私が式場の端で手を叩いているだけで、婚姻の儀は終わり、モルディエヌスは王となったのだ。

 


     ♦



 モルディエヌスが王となれば、教育係はもう必要ない。

 だけど、私はモルディエヌスを助けるために、エイレスト王国へ頻繁に通った。

 なにせ、大事な従弟なのだから。


「御機嫌よう、お義母様」


 公務室へと向かう最中に、私はお義母様に会った。


「オージェリン。今日もあの人は体調が優れないから来ないわ」

「あら、そうなのですか。お義父様がいませんと大変ですわ。ふふっ」


 そう言いながら、私は"笑った"。


「ええそうね。私達でモルディエヌスを支えませんと。ふふっ」


 そして、お義母様も同じように"笑った"のだ。


 そうして私達は、今日もモルディエヌスの元へと向かう。

 あの子を導くために。

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