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ウルスメデスその15

 キルエスから戦に参加するように説得されてからすぐに戦は始まった。

 その間も、あたしは兵士達に歌を聴かせてやっていた。

 まあ、あたしの人気があればあるだけ、作戦が有効だからな。

 といっても、あたしの人気は元からこれでもかと言うほどあるし、戦はすぐに始まったんだけどな。


 そして、最後の戦が始まった。


 正直に言うと、勝ったら面倒だ。

 何故かというと、勝ったらウルスメデスを続けなければいけないからだ。

 負けて死んだ方が楽かもしれない。

 まあ、この生活も満更ではないんだけどな。


 あたしは一番後方で、台の上に立たされて兵士達に担がれている。

 一番後方と言っても、流石に本陣より手前だ。

 それに、後方だから敵なんて来ないだろうと思いたいのだけど、こう目立つところに立たされてしまっては、空を飛ぶモンスターなどに狙われそうなのだが、その辺りは魔法部隊の結界で大丈夫らしい。


 それよりも、外なので、いつもより声を張り上げて歌わなければならないのが辛い。

 ウルスメデスの歌は、神秘的と言うか、幻想的と言うか――簡単に言うと、おとなしい歌ばかりだというのに。

 そして、どれだけ声を張り上げても、前線までは届かない。

 これから死に行く者には届かないのだ。

 流石のあたしだって、それは可哀そうだと思う。

 でも、あたしにはどうすることだって出来ない、あたしはただ歌うだけだ。

 

 そんな、あたしに声をかけて来たやつがいた。

 ちょうど歌が終わった時だ。

 それは、変なピエロ――ではなく、レミトル軍団長だった。


「おお!ウルスメデス様!今から開戦いたしますぞ!」


 正直に言うと、どうでもいい。

 あたしには関係ないし。

 しかし、こいつの声は大きいな。

 これくらい声が大きければ、あたしも大変ではなかったのに。


「そうですか。わざわざありがとうございます。死なないでください」


 ただ、この男は一応軍団長なので、無下には扱わないでおく。

 なんだかこの男は、生き残りそうな気がするのだ。


「はい!それでは行ってまいります!」


 そう言えば、あたしに似ている、あの大柄な男もこの戦場にいるのだろうか?

 

 おっと、そんなどうでもいい事を考えている場合ではなかった。

 あたしは、あたしに出来ることをしなければならない。

 それは、姉――ウルスメデスの真似をすることではない。

 "歌う"ことだ。



     ♦



 それは、開戦して間もなくのことだった。

 なんだか凄く、騒がしくなったのだ。

 それは、戦争は騒がしいに決まっている。

 だけど、あたしの周りが特別騒がしくなったのだ。

 その理由は、高いところにいるあたしにはすぐわかった。

 敵が来ているのだ。

 それも、明らかに雰囲気が違う敵が。

 きっとあれが、敵の大将のエインダルトなのだろう。

 

 だけど、あたしは歌うのはやめなかった。

 あたしがあがいても無駄な事を知っているからだ。


 その時、あたしの視界に、"あいつ"が映った。

 もちろんそれは、不審者であり、あたしの友人である、あのピエロだ。

 

 あたしの視線の先で、ピエロは戦場を駆けていき、エインダルトへと突っ込んだのだ。

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