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首斬り特待生  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第二章 白虎vs緑猿

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第六十九話 白虎vs緑猿組 その4

「す、すごい……」


 アルは顔を赤くして、驚いたような顔で僕を見ていた。


「シャルルさん……あなたは一体――」

「アル、君のおかげだ。君が僕の苦手な魔術分野を(おぎな)ってくれたから、ここまでやれたんだ――ありがとう。君は凄い魔術師だよ」


 僕が笑いかけると、アルはますます顔を赤くさせた。


「わ、わわわっ! なんでしょう、なんだか体が熱いです!! へ、変です! き、きっと、久々に人間の姿で外に居るから風邪を引いたのです!!」

「そんなことあるの……?」

「や、やっぱりアルは人間の姿でいちゃダメです! 【フォウゼル】ッ!」


 アルは布団を被って、たぬきの姿になった。


「ふーっ! やっぱりこの姿が落ち着きますね!」


 人間の姿で登校できるようになるには、まだまだ時間がかかりそうだな……。


「シャルル!」


 娯楽室に2人の来客。ヒマリとラントだ。


「ほ、本当に全員倒しちまったのか……」


「アルが頑張ってくれたからね」


「えっへん!」


「別に、私にだってこれぐらいできたわ!」


「なーに悔しがってんだよ、お前」


「悔しがってなんか……!」


 さて、のんびりもしてられない。


「あまり長話はできないよ。“緑猿組”が目を覚まさない内に拘束して隔離結界の中に運ぼう。結界内に全員を運んだら後のことは僕に任せて。3人は校舎の修復をお願い」

「マジであれやるのか?」

「うん。じゃないと、シシオは絶対に告発する。それを防ぐためにも、()()()()やらないといけないんだ……」


 1人1人椅子に座らせ、ナートンで拘束して絵画結界内の豪邸に運ぶ。

 豪邸の一室に33人入れて、ヒマリとラントとアルは結界の外へ行った。

 僕は包帯に巻かれたある物を抱えて全員の前に置く。バケツに水を汲み、水を浴びせて全員を覚醒させていく。


「目は醒めたか?」


 僕が聞くと、一番前に座るシシオが代表して喋り始めた。


「なにをするつもりだ?」


「一言で言うなら、口封じだ」


「拷問でもしようってのか?」


「その通り」


「この人数を? どんな方法をとるかわからないが、朝までかかるぜ。俺達が寮に帰らなければ確実に学校側が動く。ここが見つかれば、お前は終わりだ! 退学処分だ!」


「ここは隔離結界の中だ。まず見つかることはない。それに拷問に時間はかからない。長くても1時間で全員の口封じは終わるだろう」


 僕は隣に置いてある、ハルマン副校長から借りたとっておきに手を添える。包帯に巻かれたそれは、この学園に来た人間なら誰だって知っている物だ。


 僕は包帯に手を掛け、包帯を剥いた。


 その姿を見て、“緑猿組”の全員が青ざめた。

 それは、骸。髪の毛が蛇のようになっている女性のミイラだ。


「おいおい、ふざけんなぁ!!」


 椅子をガタガタと動かし、シシオはミイラから逃げようと後ろに動く。


「それは、それはまさか、メドゥーサの骸――!」


「その、レプリカさ。全員当然知っているはずだ。入学前のメンタルテストで使用した物だからな。気丈な人間でも1時間、コイツと一緒の空間に居れば気がおかしくなるらしい」


「やめろ、やめろ……! 俺はそいつが滅茶苦茶に苦手なんだよぉ!!」


「『やめろ』……? それは、お前ら次第だろうが。僕に服従するまで、拘束は絶対に解かない」


「こ、ここまでするのか……? たかが、対抗戦を勝つために……!!」


「――シシオ、お前が教えてくれたんだ。徹底的にやればいいとな」


「まてまてまてよぉ!!」


「さぁ、悪夢を始めようか」


 メドゥーサの瞼が開かれる。

 メドゥーサのプレッシャーが部屋中に充満した。当然、僕にもプレッシャーが乗っかる。


「マジで、マジでやめろって! 精神が、壊れちまう……!」

「シシオ。お前は言っていたな。悪夢を見るぐらいどうってことないと」


――『たかが数日悪夢を見るだけだろう? それだけでそんなに苦しむのはそいつらのメンタルが弱いだけだろうが』


 僕はいつかのシシオの言葉を思い出す。


「お前らが悪夢を見るのはたったの数時間だ。モニカやギャネットに比べれば、楽な時間のはずだ」


「うっ……!」


 それから30分待つ。

 精神の限界を迎え、叫び始める人間がポツポツ現れる中、シシオはジッと耐えていた。


「頑張るじゃないか」

「お、お前が先に()を上げれば拷問は終わるだろ! へへっ、ここに居る誰かが、お前よりもメドゥーサに耐えれば、お前の作戦は失敗に終わる!!」

「この状況でも勝ち目を捨てないのは見事と言っておこうか。いいだろう、我慢比べといこう」


 それからさらに15分が経過する。

 シシオ以外が泣き叫ぶ中、僕は平然とした面持ちで頬杖をつき、読書を始めた。


「なんで、どうして、このプレッシャーの中、汗1つかかねぇでいられるんだ……!?」


「実はな、悪夢を見るぐらいどうってことないというお前の意見、僕は同意してるんだ」


「はっ! はっ! はっ……!」


 シシオの息が荒くなる。シシオの顔色はみるみる悪くなり、汗は全身からにじみ出ていた。


「……あの日から」


 処刑を始めた日から、

 彼女を失った日から、


「悪夢なんて、飽きるほど見てきた……」

「う――うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーっ!!!!!!!????」


 シシオの精神が崩壊を迎え、“緑猿組”の全員の精神が崩壊を始めた。

 そこからさらに30分時間を置いて、終わりにする。

 “緑猿組”の心に、魂に、僕への恐怖が根付いた。

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