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首斬り特待生  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第二章 白虎vs緑猿

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第六十四話 反撃の糸口

「シシオ! テメェ!!」


 ラントはシシオに近づき、怒りから胸倉を掴み上げる。


「おっと、暴力か? 正式な決闘でもないのに暴力を振るえば立場を悪くするぞ?」

「ラント、落ち着いて!」


 僕はラントの肩を掴む。

 ラントは肩の力を抜き、シシオを放した。


「それは貴方にも言えることよね? 私達をここで潰すつもり?」

「そんなわけないだろう。俺は裏技は使うがルール違反はしない男だ。今回は、害獣を駆除しに来ただけだ」

「害獣だと……!」


 僕は怒りから声を震わせた。


 シシオは口封じにベルモンドを焼いたのだ。

 なんの躊躇いなく、あっさりと。


「利用するだけ利用して、いらなくなったらあっさり殺すのかよ!」


 ラントが叫ぶ。


 腹の底から沸々と怒りが湧いてくる。

 ベルモンドは生きていた。感情があったんだ。いたずらに殺していい存在ではないのだ。


「そ、そんな……どうして、あなたが……!?」


 僕の肩の上で、アルが震えている。

 シシオはアルを見つけると、ニヤッと笑った。


「その声……その姿! お前、アルマ=カードニックか! ひっさびさだなぁ、おい! 相変わらずそんなちっぽけな恰好で現実逃避してんのかよ!」


「し、シシオ、さん……」


「おいおいおい、そんな態度はねぇだろう? 昔、あんなに仲良くしてやったじゃねぇか? もう忘れたのか?」


 アルは僕の髪をぎゅっと握った。


「まさか、前の学校で君をいじめたのは……」


 アルは俯いた。つまり、YESということだ。


「さてさてどうするよ! ヒマリちゃんよぉ! 頼みの綱は灰になった。テメェらに俺たちの策を防ぐ手段はねぇ。――言っておくが、もう降伏は受け付けないぞ? まぁアレだ、お前が俺の奴隷(ペット)になるなら、考えてやってもいいけどなぁ! 美人大貴族様の脱衣ショーでも開けば、良い金になるだろうしなぁ!!」


「貴方……! ほんっとうにクズね!」

「人として終わってやがる。こんな手を使って恥ずかしくねぇのか!」


「敗北より恥ずかしいことがあるかよ! ()()()()やるのが俺の主義だ。震えて待ってな、テメェら全員、悪夢に沈めてやるからよ!! キキッ!」


 思わず、僕はシシオを睨んでしまった。

 いつもの、愛想のいいシャルルではなく、処刑人の顔で、感情のない瞳で、シシオを見る。シシオは僕の視線に気づき、一歩足を引いた。


「……お前らのやり方はよくわかった。これから僕らも手段を選ばないぞ。先に一線を越えたのはそっちだ」


 冷淡な声で言う。

 シシオは笑顔を引きつりながら、言葉を返す。


「あと5日でなにができるってんだ! もうテメェらは終わりなの! ジ・エンド! 反撃の糸口はいま、無くなった!!」


 舌を出して、シシオは挑発する。シシオに同調するように、“緑猿”の連中は嘲笑する。僕らはなにかできるはずもなく、拳を握ったまま森を後にした。



 ◆



 月曜日、4月26日。天気は大雨だ。

 傘を差して通学路を歩く。気分は空と同じく雨模様だった。


 クラスに着く。ヒマリから招集がかかることもなく、ホームルームが始まった。ホームルームが終わり、授業が始まる。


 あっという間に昼休みだ。食堂でラントと肩を並べて昼食をとる。


 メニューはブドウジュースにピザにトマトサラダだ。コーンスープもある。これだけ食べてもタダだ。夕食がいらないぐらい食べてしまおうと、さらにベーコンを山盛り持ってきた。


「うっめうっめ! 食堂は天国だな~」


 暗い気持ちを払拭しようとしているのか、ラントは大げさに喜んでいた。


「隣、いいかしら?」

「……天国が地獄に早変わり」


 返事をする前に僕のピザの隣にトレイを置いて、ヒマリが左隣に座ってきた。


「なにか言ったかしら?」

「いいえ、なんでもございませぬ」

「どうしたの? 食堂で声を掛けてくるなんて珍しい」


 ヒマリはいつも食堂の端っこで1人で食べていた。だがその姿に孤独とかマイナスのイメージは抱けず、言うなれば孤高。気高き1人ぼっちだった。


 僕とラントはヒマリに期待した。なにか策があって、それを伝えに来たと思ったのだ。けれど、


「別になにか用があるわけじゃないわ……1人で考えてもなにも浮かばなくて……」


 ヒマリも手詰まりのようだ。


「もういっそ、“緑猿”の奴らぶっ飛ばしちゃダメなのか? 奴らの校舎に殴り込みに行こうぜ!」

「それをして、学校側にバレれば、対抗戦で黒星が1つ付くだけじゃなく、もっと大きなペナルティを貰う可能性がある。あまりに危険よ。なにか彼らの口止めができる方法でもない限り、賛成はできないわ」 

「でもアイツらは“バクスネーク”を使って、俺達を潰しにきてるじゃねぇか!」

「野生の“バクスネーク”が学園島に居る可能性はゼロじゃない。私達が必死に訴えても、自然災害で片付けられるのがオチよ」


 どうしようもないな。

 シシオは徹底的に僕らを潰しにくるだろう。水曜日から徐々に“白虎組”の生徒を削りにくるはずだ。


 徹底的に……。


「徹底的……」


 反撃する気が起きないほどに、徹底的に“緑猿組”を潰せればいいのにな……。

 奴らの精神を、心を、破滅させるほどに追い込めれば――


――そこで、僕は思いついた。


「そうだ。徹底的にやればいいんだ」

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