表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
首斬り特待生  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第二章 白虎vs緑猿

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/77

第五十四話 緑猿と青龍

 土曜日。

 授業は午前中に終わり、午後は礼拝堂の女神像の前に行った。僕の他にこの場にはヒマリとラント、あと“緑猿組”を偵察していたガシャマルがいる。


「ガシャマル、成果物を」


 腕を組み、ヒマリは聞く。


「こちらに用意してあるでござる。御屋形(おやかた)様」


 ガシャマルはヒマリの前で片膝を付き、巻物を2本、両手の平に乗せてヒマリに献上する。

 ヒマリは「ご苦労様」と巻物を取った。


「……なんか、コイツら相性良さそうだな」

「上に立ちたい人間と、誰かに(つか)えたい人間だからね。利害は一致してるよ」


 ヒマリは巻物を広げ、目を動かす。


「片方の巻物には“緑猿組”34人の体格・得意魔術・似顔絵を。もう片方の巻物には“緑猿組”クラス校舎の内部地図を載せてあるでござる。似顔絵と地図はネストール殿に協力してもらったでござる」


 僕とラントは似顔絵を見て、「おお!」と声を上げる。

 シシオ、ムーア、ヒヒの似顔絵は本人そっくりだった。


「アイツ、絵うまいな~」

「ネストールは絵描きだから」

「良い働きだわ。これからも重宝するわね」

「ありがたき幸せ。しかし、残念ながらバクスネークの手掛かりは得られなかったでござる」

「そう……やっぱり、そこは気を付けているみたいね」

「それともう1つ、昨日、“緑猿組”のリーダーであるシシオを尾行した際、シシオが“青龍組”のリーダーと会っていたのを見たでござる」


 “青龍組”のリーダーと言えば、あの龍のような眼をした男、フランツか。

 3人の特待生の内の1人である。


 ヒマリは「“青龍組”……?」と眉を吊り上げる。


「詳しく聞かせて」


 ガシャマルは聞かせてくれた、シシオとフランツがなにを話していたのかを――



 ◆



 商業エリアにある団子屋の個室、そこでシシオとフランツは茶を飲みながら会話していたそうだ。ガシャマルはその様子を天井裏からのぞき込んでいたのだと言う。


「フランツ、俺達と組まないか?」


 テーブルを挟んで座ると、シシオはそう切り出した。


「今年の一学年は“朱雀”、“青龍”、そして俺達“緑猿”の三強だ。三強の内、二つが手を組めば他のクラスに(おく)れを取ることはなくなる。もし俺達と手を組んでくれたら盤外戦術で“青龍”を援護する。“青龍”の敵クラスの人間を闇討ちしたりな。そんで、俺達がお前らに求めるのは情報だけ。対抗戦で戦った相手のデータをくれるだけでいい。悪い話じゃないだろう?」


 フランツは怠そうに目を起こし、


「いいぜ」


 フランツの言葉にシシオは顔を綻ばせるが――


「お前らが()()()三強ならな」

「なんだと?」


 険悪なムードが部屋の中に漂う。


「もしもお前らが三強なら、“青龍”と“朱雀”以外にはまず負けない、そう考えていいんだよな?」

「もちろんだ」

「じゃあまずは、直近の試合――“白虎”に勝ってみせろ。そうすれば、手を組んでやる」

「キキッ! 余裕余裕! もう奴らとの戦いは勝ちパターンに入ってるからな。怖いのはヒマリぐらいだ。後は雑魚しかいない」


 フランツは「くくっ、ははっ!」と笑いをこぼす。シシオを馬鹿にした笑いだ。


「怖いのはヒマリだけ、か。やはり、お前らと組む価値はないな」


 フランツは立ち上がり、個室の扉を開ける。

 シシオは苛立ちからテーブルを叩き、「待てよ!」とフランツを呼び止める。


「俺達が白猫に負けるって思ってるのか?」


「ああ。お前らじゃ“白虎”――いや、()には勝てねぇよ」


「奴? クラス1位のホリーのことか? たしかに奴が出て来れば勝ち目は無くなるだろう。だが奴は不登校生で、対抗戦には興味を示していない!」


「話にならねぇ。断言してやるよ……お前らは思わぬ伏兵に食いつくされる。骨も残さずな。精々虎の尾を踏まないよう気を付けることだ」


 そこで話は終わった。

 最後にフランツは天井を見上げたという。フランツの視線の先にはガシャマルがいた。ガシャマルは2センチほどの穴から中を覗いていたらしく、気配も音も完全に消していたはずなのに、フランツと目があった気がしたそうだ。



 ◆



「他のクラスと協力するなんてせこくないか?」


 ガシャマルの話を聞き終えると、ラントがすぐに不満を吐露した。


「そんなことないわ」


 ヒマリに否定され、ラントはムッとする。


「他クラスと手を組んで情報を共有するのは手としては全然ありよ。まぁ、“緑猿”は失敗したようだけどね」


「俺らが勝てればな」


「フランツは僕達を高く買ってるようだね。話を聞く限り、僕らが勝つって信じてるようだし」


 しかし、フランツが言う()とは、一体誰のことなのだろうか? 

 反応から察するに、クラス1位のホリーでも3位のヒマリでもないようだが……まさかアルか? いや、アルは珍しい魔術を使うけど、特別強いとは思わない……。


「ガシャマル、次の任務よ。ダーツ城の内部地図も入手してくれないかしら? 必須情報は禁庫の位置と禁庫周辺のセキュリティよ」


「了解! 月曜日までには用意するでござる!」


 月曜日、2日後だ。

 ならば、セイレーンの鱗窃盗作戦は早くて月曜の夜に実行できるな。


「今、私達にできることはなさそうね。“チェスゲーム”の訓練をしましょう」

「うん。盤外に囚われて、いざ対抗戦で負けたら本末転倒だ」


 それから他の“白虎組”と合流し、修練場で訓練をして、土曜日は終わった。

 それから日曜日も特にすることなく過ぎていき、月曜日がやってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ