表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
首斬り特待生  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
序章 死刑執行人シャルル

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/77

第四話 処刑人の本気

 立ち上がり、ステージに突き刺さった大剣を右手で握りしめる。


 左手で包帯の端をつまみ上げ、包帯を解いていく。

 黒真珠の如き光沢を放つ剣肌が晒される。


 首斬り処刑の前には、小さな儀式をしなくてはならない。

 自分が斬り殺した罪人の魂が、きちんとあの世で罪を償えるように――祈るのだ。


「罪深き魂に、無慈悲の洗礼を。罪なき魂に、無為(むい)なる祝福を」


 両手で大剣の柄を握る。

 魔力を込める。

 それは、祈りの魔術。


「洗礼術【テロスバプティスマ】……!」


 代々サンソン家の死刑執行人には1つの魔術が伝授される。

 それがコレだ。斬り落とした罪人の魂を浄化する、洗礼の業。退魔の光――!


「なんと……! アレは!?」


 左腕前腕で大剣の剣肌を擦る。

 擦った跡には呪符と魔法陣が刻み込まれ、赤色の亀裂が走る。

 大剣に白光の膜が張る。


「うおおおおっ!!!」


 大剣を地面から引っこ抜き、両手で構える。

 これが、僕の武器。


「大剣の色が変わった!?」

「あの白光……アレは間違いなく――洗礼術……!?」


 さすが名門校の魔術師、知ってるか。

 教師たちは皆驚くが、このケルベロスの飼い主であるガラドゥーンだけは冷たい瞳で僕を見ていた。


「闇の魔術にのみ効く力。罪過を祓う、浄化の魔術……その力は闇魔術により召喚された魔獣にも当然効く。――古代より処刑人の家系に伝えられる秘術だな」


 葉巻を上下に揺らしながら、客席に座る女性が言った。


 洗礼術。

 呪符と魔法陣を刻んだ物体に洗礼の力を宿す術だ。洗礼術の対象は魔獣や邪教徒といった邪悪なる存在。もちろん、ケルベロスにも効くはず。


 ギロチンがある世の中で、僕の居た街が大剣による首斬り断頭にこだわっていたのは、この洗礼剣で断頭した者の魂は浄化されると言われていたからだ。実際、洗礼剣で断頭したからと言って魂が浄化されるかは知らない。まぁ、そうであってほしいとは願っているが……。


「馬鹿な! 受験生が使えるレベルの術じゃないぞ!」

「ラントの得意魔術は縫合魔術では無かったのか!?」

「やっぱり、あの子……違うな」


 なにやら観客席が騒ぎ出したが、どうでもいい。

 この胸の内に溜まった鬱憤、お前で発散させてもらうぞ。地獄の番犬……!


「ここが処刑台だ。来い。その首、斬り落としてくれる……!」

「ガアアアッ!!!!」


 威嚇と同時に向かってくるケルベロス。

 両脚に力を溜める。ケルベロスが間合いに入った瞬間、跳躍し、すれ違いざまに右の首を斬る。


 ケルベロスの首は容易く斬り離せた。洗礼術はきちんと効いてるようだ。


「ガァ!?」

「まず一つ……」


 落下と同時に、左の首を上空から叩き斬る。


「二つ!!」


 最後の首を断頭しようとしたら、ケルベロスが大きく口を開けた。

 ケルベロスの噛みつき攻撃。これをケルベロスの体の下に滑り込み回避する。回避ついでに、ケルベルスの胴体を下から串刺しにした。


「ケルベロスと互角の身体能力!?」


 客席の誰かがそう叫んだ。


「ちっ」


 ケルベロスめ。筋肉と骨で大剣を締め止めたな。

 大剣が抜けない。面倒なことをしてくれる。


「【グギギ!】」


 ケルベロスは口の両端を吊り上げた。


「調子に乗るなと言ったはずだぞ。首を()つ方法は剣で斬り落とすのみじゃない」


 大剣は突き刺したままに、両手を柄から離し、

 ケルベロスの右前足をスライディング気味に蹴り飛ばす。


「【ガッ!?】」


 ケルベロスはバランスを崩し転倒。

 僕は右脇に、ケルベロスの最後の首を挟み込んだ。


「ちょっと、あの子、なにをする気!?」

「待ちたまえ君!」

「嫌だね。黙って見ていろ。処刑中(しごとちゅう)だ……!」


 倒れたケルベロスの最後の首を両手で掴み、ねじりながら引っ張る。


「せーのっ!」


 骨が軋み、折れ、

 肉が裂け、

 血が搾り上げられる音が響く。

 雑巾を絞るように、首を絞り切る。


「……三つ」


 黒い血が噴水の如く吹き上げ、ステージ上にばら撒かれる。

 ケルベロスの最後の首はねじり切った。


 これで、処刑終了だ。


 唖然とする試験官たち。

 シーン……と、会場内に静寂が訪れる。


「失礼します!」


 静寂の中を破って来たのはバンダナを頭に巻いた男子。

 バンダナ男子は頭を下げ、大声を出す。


「受験番号022! ラント=テイラーです!! よろしくお願いします――って、アレ?」


 おっと、本物のラント君の御登場だ。

 ラントは頭を上げ、ケルベロスの死体を確認し、頭の上に大量のハテナマークを作った。


「えぇっと、何事っすか?」


 試験官たちは『こっちが聞きたい』と言いたげな顔をした。

 面倒なことになったな。けど、いいストレス発散になった。


「すみません。僕は受験生じゃないです」


 いつも通り、作った笑顔を浮かべる。

 試験官たちは視線を一点に集めた。僕ではない。試験官の中でも偉そうにしている、葉巻を咥えた女性に視線を集めた。


 女性は楽し気に笑って、事態を収拾しようと口を開く。


「とりあえず、外で話そうか。白髪ポニテのボク」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ