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首斬り特待生  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第一章 ようこそ学園島へ

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第二十話 奇跡

 ど、どうなるんだ? 


 杖の性質は“射出・付与”。

 剣の性質は“斬撃”。


 ならば風船はなんだ?

 駄目だ。さっぱりわからない。


 ラントに『教えてくれ』と目配せをする。

 『わからない』というアイコンタクトが返ってきた。


 ヒマリに至ってはこっちを見てすらない。

 こうなれば適当に言うしかないか……と思ったところで、口を健気にパクパクさせる少女が目に入った。

 モニカだ。

 小さい口を開いたり、閉じたりしている。

 なんと言ってるんだ? 2文字というのはわかるが……。


 “お”、“ん”?


「……ぼ、む」


 小さく聞こえた声。

 それで僕は答えを察した。


 ……ボムか!


「爆弾になります」

「……正解だ。【フレーミー】」


 ガラドゥーンは風船に魔導印を刻み、風船を空に飛ばした。

 さっき“フレーミー”を刻んだ杖を振って、風船に火の球を当てた。風船は破裂。爆発音が鳴り、風船から爆炎が散った。


「風船の性質は“炸裂”。破裂した際に、刻まれた魔術を高威力で発散させる。トラップなどによく使うものだ」


 ただの風船が詠唱1つで凶器に早変わりだな……。

 同じ火炎魔術でも、宿す対象が杖か剣か風船かでここまで効果が変わるんだな。


「モニカ=シルディス」


「は、はい!」


「甘さは弱さ、優しさは強さだ。この違いをよく考えておくように」


「はい……」


 モニカが助け舟を出したのを、ガラドゥーンは見逃さなかった。

 ごめん、と手振りすると、大丈夫、とモニカは言ってくれた。


「では、“フレーミー”の実習に入りたまえ」


 支給された木造りの杖。

 こう杖を握ると、いよいよ魔術師という感じだな。


「【フレーミー】」


 唱え、魔導印を刻む。

 杖を振ると、ぷしゅーと腑抜けた音がなり、黒い煙が杖の先から出た。


 うん、失敗したようだ。


「センスねぇな」

「そういうラントはできるの?」

「もちろんだ。【フレーミー】!」


 ラントが杖を振ると、ぱしゃーと腑抜けた音が鳴り、火花が小さく散った。

 失敗だな。


「【フレーミー】」


 一方注目を集めるはヒマリの“フレーミー”だ。

 杖の先から射出された炎の球は人間の頭ぐらい大きく、数十メートル先の(まと)を焼きぬいた。


「さすがはランファー家のお嬢様。別格だな」

「そうだね……」


 あんなの当たったらひとたまりもない。

 僕も負けじと“フレーミー”を実践するも、結果は実らず。

 5回振ると魔導印は光を失い消え去った。


 良い機会だ。ついでにアレを、


「試してみるか……」


 武器によって術の発動形が変わるのなら、洗礼術も大剣に使うのと杖に使うのでは発動形が変わるはず。洗礼術は邪悪なる存在以外には効かない。暴発しても問題はない。


「……【テロスバプティスマ】」


 バゴッ! 

 杖は根元から焼き切れ、弾けとんだ。


「おいおいシャルル、そりゃないべ」


 ラントが笑いかけてくる。

 僕の杖の先に居たガラドゥーン先生が近づいてきて、僕から杖を取り上げ、三度杖を見た後、「ふむ」と顎を撫でた。


「やはり君は、レベルが違いすぎるらしい」


 ガラドゥーンは微笑む。


「……すみません」


 ガラドゥーン先生は杖を没収し、僕に背中を向けた。


「あそこまで言わなくてもいいじゃん。なぁ、シャルル」

「別にいいよ。本当のことだし」


 どうして上手くいかなかったのだろう。大剣と杖で同じ詠唱じゃダメなのか? 後でハルマン副校長にでも聞いてみるか。


 クラスの半数も火炎を出せないまま、二時間目は終わった。

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