ひとつ腐ると隣も腐る……。
「……ウソでしょ。……無い。落とした!?」
ガサガサと乱暴に鞄の中を全部確かめ、自分の座席もあらためて……廊下の個人ロッカーを確認しても見付からない。
……わたくしの!偽木くんと松田くんを題材に書き始めた「忌色王子と護衛騎士の密事」のキャンパスノートが無いのです!
大事なノートがないと偽木くんと松田くんの組んずほぐれつの続きが書けな……じゃない!
続きを急いで書かないと、今浮かんででいるイメージが拡散してしまいます! じゃなくって!
あのノートが誰かの手に渡ってしまったら、わたくしはおしまいでございます!
最悪のパターンは、偽木くんか松田くんにノートが拾われてしまうルート。その他、男子に拾われてもアウト!偽木くんは陽キャ陰キャヤンキーイケメン、ジャンル問わずな交友関係な持ち主。どの男子にノートが拾われてしまっても確実に、腐った委員長の吊し上げルートでございます!
ぁ、どうしよ……。
「委員長、あの、これ」
クラスメートが全員帰って行った放課後に、ただただ絶望に立ち尽くしているところ、普段なら明るい挨拶が売りな富澤さんから、声が掛かりました。
なんだかもじもじしてますの? 富澤さんは中学から剣道女子で全国大会でも一、二を争う腕前の方であります。普段はハキハキ、いかにも武道系女子らしい言葉遣いや態度が印象的でしたわ。
なにゆえ、こんなに言葉に詰まり、言い澱むのでしょう……。
「このノート、田渕さんのだよね?」
さぁっと血の気が引くのが分かります……。
ば……。
ばれましたわぁぁぁぁ!
ああぁぁ、明日からBLキモジョシ陰キャメガネとしてイジメられる日のはじまりに違いないです。
オワタ、オワタ、JKライフはもうオワタ。
バッドエンド確定ですわ……。
「……あの、この小説の続きはないのかな!?」
「……ふぇ?」
何だかもじもじと、所在無さげな富澤さん。
あれ? 布教チャンスきたぽ? げへ……。
……げへっ! わたくし、田渕綾乃は信者獲得に成功しましたぁぁ。
「田渕女史! 朝から井上氏と偽木氏のイチャイチャですわよ!」
「富澤女史! わたくしは小説をゴリゴリしますから!イラスト腹筋割り増しヨロシクです!」




