ランチタイムも腐ってる
飲食しながら読むのはお勧めしません。
お昼休み、私たち学生にとって一番大事な時間と言えるでしょう。クラスメートとおしゃべりしながら食べるお弁当は一層美味しく感じられます。毎朝早起きしてお弁当を作ってくれるお母さんにも感謝しないとですね。
楽しいランチタイムですが、私、田渕綾乃には別の意味でも重要な時間とも言えます。大事な大事な観察タァァイムでございます。
先日の席替えで、教室全体を俯瞰的に見渡せる一番後ろの席になったおかげで、不自然な移動をせずに偽木くんを観察出来ます。この幸運、BL神様に一晩中祈ったからでしょう。感謝します神様。
お、今日も仲良く松田くんと二人でたべるのですね。偽木くんはお弁当、松田くんはコンビニパンですか……。
「あれ? 今日はパンだけなの?」
「うん。うち共働きでしょ。母さん、今日は急な早朝出勤になったみたいで、『ごめんね』ってメモとパンが置いてあった」
「あー。パン1個じゃ足りないじゃん。飲み物も無いし。ダッシュで購買いってくるわ」
「あっ、偽木くん……」
松田くんの返答も待たずに走って行ってしまいましたね。今日は購買がある中庭に、パン屋さんと精肉店さんの揚げ物が両方来る日です。飲料の自販機も中庭にあるので、昼休みは全校生徒のバトル・ロワイアルが繰り広げられる戦場が発生いたします。
「コロッケとコロッケとコロッケパンげっと~」
「全部、コロッケ!?」
「出遅れたらから選択肢が無かった」
昼休みのチャイムが鳴ってからの10分以内には、パンと揚げ物は完売してしまうのです。出遅れたのに3つもゲットしたのは凄いことなのです。
さすがマクスウェル卿、王子殿下のために全力なのですね! 強化魔法とか全開でしたか?
『忌色王子』で使えそう……幼少期から離宮に隔離され、毎日硬いパン1つしか与えられない王子のために、食料品をこっそり持ち込む護衛騎士。感謝から徐々に芽生える想い……。
「飲み物も売り切ればっかり。でもイチゴみるくはあった。好きだよな?」
「パンにはイチゴみるくだよー。さすが偽木くん、僕を分かってるー」
「何年、一緒にいると思ってんだよ」
ふあぁぁ! ジュン王子殿下は甘党! い、イチゴみるく。なるほど二人のキスはイチゴ味になりますわねっ! は、はは、捗りますわぁぁぁ!
気を強く持つのです、綾乃!
今はランチタイム、ノートにガリガリ書いてしまったらいくらなんでも注目の的になってしまいますわ。今は執筆衝動は我慢。脳内ネタ帳に記録ですわっ。
「偽木くん、珍しく甘いジュース買ったね?」
「売り切れで、しゃーないから。俺のはバナナみるくだよ。これ甘過ぎだよ、絶対、唐揚げと相性最悪だよ」
「僕なら平気だけどね」
ぶひぃっ、ぶひぃっ、ぶひぃぃぃっ! いつもコーヒー微糖無糖派の、偽木くんがぁ……ば、ばなっ、バナナみるくですとっ!!
バ・ナ・ナ! み・る・く!?
に、に偽木くんっ、特ネタごちそうさまですぅぅぅぅっ! わわわたわわたくし、わたくし、は、ははは捗りま…………バタンッ!
「誰か倒れたぞ! 保健委員っ!」
妄想が限界を突破し気絶した田渕綾乃は、保健室のベッドで放課後になるまで肌色多めな夢を見続けた。




