田渕さんは腐ってる
私、田渕綾乃は同じクラスに気になっている男子がいます。授業中、休み時間、昼休みに放課後、気がつけばずーっと目で追ってしまうそんな人。
私たち新一年生は先輩方に、『当たり年』と呼ばれるイケメンの多い年でした。女子はまぁ、それなりと……ぱっとしないとの評価。
しかもうちのクラスにそのイケメンが片寄っているとのこと。信じられないような幸福! ジャンルの違うイケメンがたくさんとかががががぁ!
取り乱しました……。
入学式から一週間が過ぎました。我が1年4組には『奇跡のクラス』と呼ばれています。クラスが別になった中学の同級生からのやっかみがすごいすごい。廊下で会うたびに舌打ちされてます。中学では仲良かったよねぇ?
イケメンは女子の友情を簡単に引き裂くようです。
先ほど我がクラスと言ったのは私、田渕綾乃は担任より学級委員長を任命されましたので。まぁ、ファッションに興味のない私はいつも長めの三つ編みおさげと黒縁眼鏡のため、あだ名はいつも『委員長』。
そんな私の趣味は人間観察と……。
「……あ。田渕さん、おはよぅ……」
「…………お、おはようございましゅ」
ふああ! 王子様、朝のご挨拶ありがとうございます! あまりのご尊顔に噛んでしまいました。うぅ顔から火が出そうっ。
『王子様』こと『松田潤』くん。日本人離れした肌の白さと艶のあるライトブラウンの長めのミドルヘア、高身長に制服のブレザーの上からでも細マッチョを匂わせるシルエット。
物語の中から抜け出てきたに違いない超絶イケメン! 王子と委員長では月とスッポンどころではないので、恋心を抱くことすらありませんでしたね。眺めてるだけで胸いっぱいです。
「委員長、おはよー」
「偽木くんもおはよう」
来ました私の気になる人、偽木くん。あ、異性として気になってるって話ではありません。全然好みのタイプじゃありませんし。
ザ・委員長顔の私が偉そうに言えるわけじゃありませんが、偽木くんはザ・フツメンです。どこにでもいるモブ顔。背も私よりちょっと高いくらいなので165センチくらいでしょうか、クラスの男子の中では低い方。
目立つ容姿をしているわけではないのですが、彼は最重要観察対象です。目が離せません。
あ、ほらっ言ってるそばからっ!
「ちっちゃい頃から見てるけど、相変わらず地毛なのに茶色……不思議だよなぁ」
「両親真っ黒なんだけどね」
松田くんの前髪を右手ですくいとり顔を近付け、まじまじと観察する偽木くん。
来ましたわ! そうっ、これですわ!
幼馴染みで片付けるのには、ちょっと近過ぎる距離感ではありません? 髪をそっと掴む? 滾る、滾ってきましたわー!
このネタ使えますわ、新作の『忌色王子と護衛騎士の密事』にっ。えーと『護衛騎士はそっと王子の髪をすくいとり「俺はお前の色が好きだ」。初めて掛けられる言葉に王子の目は潤み、そのまま……』そうだっ護衛騎士にまだ名前ついてなかったから名前もらっちゃって『ギギ・フォン・マクスウェル』にしてー。捗るっ、捗りますわ! 今日も偽木くんのおかげでBL執筆が捗りますわ!
「委員長、朝から予習かよ……」
「すっごい、勢いだねー」




