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3話 入学当日-1

よろしくお願いします


え、逃げられたんだよね僕。

もしかして、久々の知らない人との会話だったから知らず知らずのうちに変な話し方とかしていたのかな。

あの人の話し方に影響されて少し大人な男の話し方を頑張って勉強してきたのだけど...

あ、敬語を忘れていたのか。これが原因かどうかは分からないけど今度から気をつけよう。


それはともかく、大丈夫かなあの女の子。ちゃんと目的地まで着けていたらいいけど。

と、ここまで考えてハッとする。


「あの女の子の心配してる場合じゃないや、早く寮までいかないと!」


夜の始まりを知らせる鐘からだいぶ時間が経っているし、お腹も空いたし早く行こう。そう考えて僕は早足で歩き始めた。









結局寮に着いたのは、一日の終わり、24時を知らせる鐘が鳴る直前だった。


寮の管理人さんも、この遅さには呆れていたけれど、2階の隅にある僕の部屋に案内をしてくれた。


部屋はリビング、キッチン、寝室、トイレとお風呂。押し入れなどの収納がある。

キッチンには一通りの調理器具が揃っていたり、お金のかかる冷蔵庫やハンガーといった小物すらもある。


(お金かかってるなぁ...)


しばらく部屋を見回っていたら、食堂の残り物のご飯もいただけたのでこれを部屋で口にかき込み、急いで沸かしておいたお風呂へ。パジャマを出す時に荷解きしていないことに気づいたが早く寝ないと明日に響くと思って諦める。


ちゃちゃっと汗を流して体を洗ってしばらく湯船に浸かる。


なんか急に電気が消えたり、知らない人が入ってたりとかはなく、特に問題なく済ます。

あえて言うなら、いただいたご飯に入っていた山菜は苦手だったから残すか頑張って食べるか悩んだぐらい。はい、きちんと食べました。


明日の制服と目覚ましをカバンから取り出して準備をする。


「おやすみなさい」


と、誰もいない部屋で呟いてベッドに入り目を閉じる。

部屋に着いてからもバタバタとやることを済ましたからか、落ち着いて目を閉じればすぐ睡魔に襲われて眠りに落ちた。










朝、目覚ましの音と共に目を覚ます。


寝ぼけた目のまま、洗面所へ向かって朝の支度をする。鏡に写っているものは音で確認できないためちょっと身支度がやりづらそうだね、と言われたことがあるがさすがに5年している事であるので慣れてしまっている。


ぼーっとしながらゆっくりと制服へと着替えて、終わった頃に目が覚めてくる。

そして、時計を確認するとあら大変。朝ごはんを食べる時間がない。


カバンと上着を手に取り、朝ごはんは諦めて急いで寮を出る。

迷子対策のためにほかの学生であろう集団に着いていくことにしたので、遅れたから走ろうなんてことは出来ないのである。


というわけで、絶対迷子にならない登校法を利用して学園へ向かう。


僕が学園で学びたいこと、それは騎士としての礼儀作法や意識することなどの戦闘技術以外のものが大きい。

当然、戦闘技術も大切ではあるが僕がなりたいものになるためにはやはり礼儀作法の正しさなども同様に大切だと考えている。これらは授業で学ぶことが出来る。

これは個人的に暴漢のような荒くれ者の『英雄』ってあまり格好よくないと思うし、僕の憧れ、目指す『英雄』は荒くれ者の『英雄』でないからである。


加えてこの学園には、貴族出身の人間から一般市民といった幅広い人がいる。そこを利用し、護るべき全ての民の習慣や生活を理解してより彼らに寄り添った英雄になる、という目的もある。


できれば、友人を作ることができれば学びやすいのだろうが。




学園が見えてきた。学園は本当に大きく見渡す限りに設備や校舎が建てられている。

色や綺麗さは『鑑定』を行わないと分かりはしないけれど、規模からやはり力の入った学園であることを感じる。


(なんというか、やっぱりワクワクしてしまうよね)


期待、胸の弾みに顔が綻ぶのを慌てて引き締める。

新入生である僕がどこへ行くべきなのか分からないので『エコーフィールド』で辺りを探していると、誰かに声をかけられる。髪型的に男の人であろう。


「君、新入生だよね」


新入生の案内をしている人かな、と思った僕はそちらへ向き直って彼に返事をする。


「はい、すみません実はどこに行けばいいかわからないのです。教えて頂くことはできないでしょうか」


彼は僕の言葉を聞いて小さく笑う。


「そんなに堅苦しい話し方しなくても大丈夫だよ。けど...」


「けど?」


「入学式、もうすぐで始まるよ」


へ?今なんと言ったのだ。もう始まる?

いやいやそんな馬鹿な、と思い学園の校舎にかかっている大きな時計を確認する。


集合時刻まであと、2分である。

英雄になると言ってる僕が遅刻なんてする訳には行かない。格好悪いもの。急がないと。


「えっと、すみません、場所教えて頂けませんか?走っていくので」


「あっちだよ、あの左端にある大きめの建物」


そう言い、彼は指差しで教えてくださった。距離的には走れば間に合う距離だ。


「ありがとうございます!また後日お礼に向かいますね!」


「いやいや、お礼なんて大丈夫だよ。転けないように気をつけてね」


一礼して、頭を上げた瞬間に彼に『鑑定』を使用する。僕の頭に彼の名前と容姿、学年などが浮かび、それを記憶すると僕はいわれた建物へと走った。もちろん、転ばないように気をつけて。




建物へ駆け込み、受付にいた人へ名前を告げると、こういう時はもっと早く来てくださいと注意を受けた。

全くの正論であるため、反省しようと思います。


ギリギリで間に合った僕は、荷物を預けるようにとの指示に従い荷物を預けると、入学者の列の一番後ろへと案内された。もうすぐ始まるから少し待っているようにとの事だ。


そして本当に少しした時、待機している新入生達へも聞こえる放送が流れてきた。


「これより、本年度新入生の入学式を執り行います。まずは新入生の入場です、皆様拍手でお迎えください」


会場への扉が開き、1人ずつ会場へと胸を張って歩いていく。


と、ここで僕の少し背後にあるこの建物への入口からドカッとぶつかるような音が聞こえた。

僕より小さい、女の子だった。扉にぶつかって目を回していた彼女はすぐさま警備員により取り押さえられ担ぎ出されそうになっていたが、僕は彼女が入口にぶつかった時に落としたものに見覚えがあった。

それは、新入生であることを示す小さいエンブレムだ。

僕はそれ気づくと次々と入場していく学生の列から離れて、内側から入口を開けた。


「警備員さん、ちょっと待ってください!彼女は新入生です!」


警備員は何言ってんだこいつ、と言った目で僕を見るのだが僕はさっとエンブレムを拾い、警備員へと見せる。納得した警備員は、両手を引っ張るように持ち上げていた女の子を地面に落とす。


「きゃっ!」


女の子はしりもちをつくと思い目を瞑るが、僕はさっと女の子を受け止めて、そのまま素早く列の最後尾へ向かい、女の子を前にして僕が一番後ろへとなるように並ぶ。


「あ、ありが...」


「気にしないでください。それより、もう順番が来ますよ」


と言うと女の子はさっと意識を切りかえて前を向いた。

僕は言うと、正直いいことをしたなとちょっと嬉しい気持ちになっていたため、顔の緩みが隠せなかった。

さすがに、自分の番が来る頃には引き締まった表情へと戻したが。


さあ、入口にぶつかった女の子もあの時のようなどんくさい感じは一切なく、堂々とした様子で入場していく。


僕も同様に胸を張って、堂々と入場し、壇上に並べられた椅子へと着席しようとした。のだが前の女の子が椅子に座らず立ち往生していた。


すぐさまエコーフィールドを確認すれば、椅子がのこりひとつしかなく、女の子が座れば僕の椅子が無くなるということが分かった。

遅刻したのは女の子だから、座るのを躊躇しているのだろう。


(学園側も、最初から椅子ぐらい置いといてくれたら良かったのになぁ)


僕は壇上へ登ると、無理やりに女の子を椅子に座らせる。僕はその隣で背を伸ばして姿勢よく立つ。

ここで女の子を押しのけて座るなんてことするなくらいなら、こっちの方が絶対いい。こっちの方が格好つく。

立っている僕を見て、在校生である出席者方々はザワザワとしている。雰囲気から嘲笑されていることは確かだろう。


僕が立っていようが関係なく、学校長の祝辞や新入生代表の挨拶など全て過ぎ去っていく。


入学生代表者は貴族出身の15歳、性別は男。名をユエル・ウォルターと言う。彼の挨拶は、


「我々の高貴な生まれに恥じないような」

「貴族としての風格や立場を強く意識して」


などの一般市民と貴族といった高貴な生まれの者とを遠回しに区別したような発言が多く、僕のような生まれの人間ではきっと仲良くなれないだろうと、少しこれからの学園生活に不安を覚えた。

ありがとうございました

週2or3更新目指して頑張ります

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