探索2
「魔石の純度は魔物の魔力に比例して高くなる。だから、今回の魔物は総じて魔力が低いのかと思った。だが、もうひとつだけ魔石の純度が低くなることがある。それは、魔物が生まれる過程の何処かで、別の魔力が入り込んだ場合だ。魔石が形成する段階で全くの第3者が魔力を混入すると魔石の純度が低くなる。これは実際に研究され、論文としても公開されている。魔物使いが飼っている魔物が卵を生んだとき、その魔物の卵に魔力を注ぐとそうなったらしい。もっとも、好き好んで魔石の純度を下げようという馬鹿がいないから一般的に知られてはいないが。」
「純度が低かったのは、第3者が魔力を魔石に注いだせいだと?」
ローズはヒューリッヒさんに確認した。
「スタンピードは人為的に起こすことができる。魔物には卵生、胎生問わず、元々魔物だったものが繁殖して増えることがほとんどだが、魔物ではない動物が魔力に過剰にさらされることによって突然変異する場合がある。スタンピードは後者で、魔力が高い土地で動物に魔力が過剰にさらされた結果起きる。しかしその場合は、生まれ持った魔力とその土地の魔力が同質なため、魔石の純度にさほど影響はない。」
「つまり、魔石の純度が低かった今回は自然に発生したものではなく、人為的だと言えるということですか。」
ローズがヒューリッヒさん言葉を引き継いだ。
「考えすぎではないのか?」
アルフレッドさんが聞いた。
「その可能性もある。何もなかったらなかったで問題ない。」
それならば、ピアーダの人に事情を話してついてきてもらえばよかったのに。わざわざ内緒にしなくても。確証がなかったから言わなかったのだろうか?どう考えても、現地の人の協力は不可欠だ。後で説明する必要もある。
でもちょっと待てよ。ヒューリッヒさんはとっても効率的な人だ。同じ説明を2度もするとは思えない。ピアーダの人に言わないつもりなのだろうか?…いや、それはない。毎回こられるわけではないのだから。伝えなくて困るのはピアーダの人、次点で私達だ。伝えないわけがない。…ピアーダの内部に実行した人がいない限り。
「ヒューリッヒさんはピアーダのギルド内に実行した人間がいると思っているんですか?」
あり得ない、そんなはずないと笑い飛ばしてくれることを願って私は聞いた。
でも、ヒューリッヒさんからの返答は私の期待とは真逆だった。
「あぁ。私はそう思っている。」
「お前、ギルド内の人間を簡単に疑うんじゃねえよ。」
アルフレッドさんが冷たい声で言った。
「だから、確証はない。だが、この時期は異動が頻繁に起こる時期だ。森にいくには砦からでなければならないうえ、スタンピードを起こすには継続的に膨大な量の魔力を注ぐ必要がある。砦から不審に見られず継続的に出ることができ、膨大な魔力を持つ人間はそう簡単にはいまい。それに、あくまで可能性の話だ。何度も言うように確証はない。進むぞ。」
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