戦闘2
美しい。単純にそう思った。魔物が奢られていく姿を見て、こんなことを思うなんて、思いもしなかった。アルフレッドさんはすらりと伸びた背で、剣で、魔物を殲滅していく。来る魔物を、一刀で、ざくりと。剣は赤色に染まっている。時折、返り血を浴びて。倒された魔物から溢れてきた血は、まるで赤い花のように見える。そのなかで、アルフレッドさんは、美しく舞っていた。
近くにいた魔物の最後の一匹の首を落とした後、アルフレッドさんは持っていた剣を空中で一度だけ振った。それによって、剣の刃は赤色から元の銀色に戻った。凛とした雰囲気を纏ったアルフレッドさんはとても美しかった。そう私は不謹慎にも思ってしまった。
アルフレッドさんがこちらに歩いてくるのが見えた。はっとして周りを見る。そして、まだ終わってないのだと、自分に命じる。見とれている場合ではないのだった。
とりあえず、地上の砦近くにいる魔物や片付けたことをヒューリッヒさんに報告する。すると、上空も片付けろとの返答があった。
上空の魔物はまだ片付いていない。町のなかにはいる前に止めなければならない。上空から攻撃されて防ぐには結界をはるしかないが、どこに来るかもわからない攻撃に備えて町全域に結界をはるだけの魔力の余裕はない。魔術師は砦や外に集中しているため、町の方に残っている人数は僅かだろう。到底町全域に結界をはる余力があるように思えない。つまり、今ここで何とかしなければならない。
かといって、人間である私達に翼がないため空は飛べない。飛行魔術はあるけれども、小回りが効かない上に、制御しつつ他の魔物、それも動いているものを狙うのは至難の技だ。転移で重力を飛ばして浮くというのもひとつの手だけど、浮けるだけであって空中を移動するには他の魔術を行使しなければならない。
あぁ、もう!ヒューリッヒさんもその優秀な頭を使って何とかしてくれればいいのに!て言うか、こっち来てくれればいいのに!まあ、指揮官だから仕方がないのだけれど。
心のなかで愚痴をいっていたって、何も変わらないのだけれど…ね。
……ん、ちょっと待てよ。私はふと思った。押してだめなら引いてみろ。パンがなければケーキを食べればいいように、こちらがいけないなら、向こうから来てくれればいいんじゃない!そう、私達がいくのではなく、向こうから来てくれれば解決するのだ。
ぱっと顔をあげるとアルフレッドさんが横にいるのがわかった。
「良い案は思い付いたのか?」
「へ?」
訳がわからなくて、困惑する。どういう文脈だこれ?
「ヒューリッヒのことだ。どうせ次は上だろう。上空を守っていた魔術師の大半を回復要員にまわしたみたいだしな。」
なんでわかるんだろう。以心伝心かな。
「人の気配が減っている。それより策は?」
何でわかったんだろう。…脳筋っぽいのに。
「とりあえず、上空の魔物を下に降ろすのであとは何とかしてください。」
我ながら清々しいほどの丸投げである。上空にいる敵の難点は攻撃が届かないこと。これにつきる。魔法はともかく、剣をなどの物理攻撃の場合だとこれさえクリアすれば、大抵はなんとかなる。
「わかった。」
その返事を聞いてすぐ、私は魔法を行使した。上空の魔物を覆い尽くすように空一面にいる魔物に重力を転移した。急に体が重くなった魔物はバタバタともがくも体は降下していく。その隙をアルフレッドさんたちが逃すほどもなく、降下してきた魔物は次々と殲滅されていった。
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