戦闘
光の粒が収まるとその先は地獄だった。砦にはたくさんの怪我人が、あちらこちらにいる。外を見ると、黒くおぞましい魔物と懸命にそれと戦っている人が見える。黒いものは砦の外を埋めつくし、ところどころに赤い水溜まりができている。
「何、ボーッとしている。」
私を現実に引き戻したのは、ヒューリッヒさんの声だった。
「君は被害を少なくするため、ここにきたのだろう。ここで懸命に戦っている人々を助けるためにきたのだろう?ボケッとする前にやるべきことをしなさい。」
その通りだと思った。私はスタンピードを留めるために、被害を少なくするために来たのだった。こんなところで立ち止まるためにきたのではない。
私たちは砦で作戦をたてていた。指揮はヒューリッヒさんがとる。大きな木のテーブルに周辺の地図を広げ、現地の人と被害の状況を確認した。現地のギルドの人と共に3つのグループにわかれて向かった。
アルフレッドさんは一番多く魔獣がいるところへ、ローズは後続の魔物へ向かうチームへ。私はというと、
「私が、どこにも入っていないのですけれど…」
「あぁ、君は連絡係と最終兵器だから基本的にここだ。ここからなら彼らを見渡せるから、駆けつけつけることも容易だ。」
まぁ、確かに…。
「それに、転移で魔法を飛ばすこともできますしね。」
「ほぅ、そんなこともできるのか。」
ヒューリッヒさんはにたぁと笑った。これは、あれだな。絶対にこの人腹黒いな。と直感させるものだった。うん、絶対に敵にまわしたくないタイプ。
「ならば、この魔法を打ち込んでくれないか?」
「え…。これですか……?」
「あぁ。それだ。前線に出ているものは、後ろの方の魔物には手が届かない。後ろから片付ける。」
私は、魔物の体内に向けて、火球を打った。
体内で爆発した魔物はバタバタと倒れていく。口らしきものからドロッとした赤黒い液体が流れてきた。連続して一度に200ほどの魔法を打ち込んでいく。
しかし、足の早い魔物は簡単に逃れてしまう。撃ち込む速さに追い付いていかないのだ。
「ローズ、私はここの地面を持ち上げる。その地面を氷で覆う。そうすれば、なかなか登れまい。ここの登れなくて溜まった、魔物の処理を任せる。」
ヒューリッヒさんは地図の砦から少し離れた辺りを指し示した。それを私はローズに伝える。そして、宣言通り、地面を持ち上げ、氷を張った。魔物からしてみたら、意地悪くやっとのことで上った先に待ち受けるのは針の山。勢いをつけて上ったため、そのままの勢いで上ったら最後針に刺さってさようならである。後ろに戻ろうにも、ローズが溜まった魔物を風の刃で殲滅していく。
ローズ、ヒューリッヒさん、私で後ろの魔物を殲滅していく。後続の魔物をほとんど殲滅したところで、ここを残りの人たちに任せ、アルフレッドさんと合流する。
「前線に出ているチームを援護してくれ。あとは、スタンピードの発生源とうえたけだ。」
アルフレッドさんは私の身長ほどある大きな剣を魔物の首めがけて振っていた。
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