出動
主任は慌ててこちらにやって来て、一息でこういった。
「ピアーダで、スタンビートが起きたそうだ。こちらに救援要請がきた。魔物がこちらに流れてくる可能性もある。アルフレッド、ヒューリッヒ、ローズ、イリス現場に急行してくれ。」
ピリリと緊張が走った。
「スタンビートの規模は?」
いつもは冷静なヒューリッヒさんが緊張した面持ちでいった。にこやかなクリスさんも、朗らかなアルフレッドさんも顔がこわばっている。
「目視ではわからないが、大体5万ほどだそうだ。」
「5万⁉」
私はすっとんきょうな声を出してしまった。
「あぁ、種類も多く詳しくはわからないが飛竜がいるらしい。詳しくはここにかいてある。いってきてくれ。」
「了解しました。」
私たちは声を揃えて、力強く返事した。
「あの、主任。ここは大丈夫なんですか?」
主任は笑って、
「ここは私とクリスで十分だ。ある程度は、戦えるからね。それに、君たちが食い止めてくれるなら問題ない。」
と言った。
「早くしろ。」
ヒューリッヒさんの顔には、何をモタモタしているとかいてあった。アルフレッドさんは冷たい目でローズは心配そうにこちらを見ていた。
「スタンビートが発生した正確な場所、もしくは方角と距離でもいいです。教えてください。」
「はぁ?何ふざけたことをいっている?ここからピアーダまで馬で駆けても到着するのは明日になる。ボーッとしている時間はない!おいていくぞ。」
ヒューリッヒさんはイライラしながらこういった。
「ピアーダまで一瞬で行けるとしたらどうします?」
私は不敵に笑って言った。
「何馬鹿げたことを」
「ピアーダの方角はここから真東、距離は120キロ」
「ローズ…」
「イリスは転移が使えます。その方が早いし、助かる命も多くなるはずです。」
ローズは二人の目を見て言い切った。
「急に言われて、はいそうですか。と対応できるものではない。だが、事は一刻を争う。いくぞ。」
ヒューリッヒさんは
「相変わらず、素直じゃないな。」
とアルフレッドからからかわれていた。
「向こうへ行けるのなら、砦に飛んでくれ。」
「わかりました。皆さん私の周りに来てください。行きます‼」
私は目をつぶって、魔法を行使した。
『転移<現在地より真東距離120キロ>』
私達の周りをキラキラとした光が舞う。コンパスで頭の中の地図に円を描く。地図の現在地から真東の方向に円と交わった位置に飛ぶことを意識する。こんなことをしなくても、大体の感覚で行けるのだけれど、間違ったら怖いから、念には念をいれて慎重に行う。
私達を光の渦が飲み込んだ。
最後まで読んでくださって本当にありがとうございました