嵐の前の静けさ
私たちはある程度の仕事の概要はわかっている。というのも、学院での研修で一通り学んだからだ。学院と言うのは、ギルドの職員、騎士や国の官僚などを育てる機関である。学院に入るには学問、武術、魔法とがある程度できていないといけない。そのなかで成績優秀な人材が学院へと入学できるのだ。学院では卒業するまでに自分が将来就職するであろう職業について研修するための期間がある。その期間で大体の業務内容を把握するのだ。つまり、その学院を出たものは即戦力となることができる。したがって、大体の職員は学院卒の人間である。
ギルドの仕事を簡単にまとめると、依頼の管理、利用する人への説明、冒険者の依頼達成などの情報の管理、お金の管理、怪我をした場合の魔法師の手配、緊急依頼がきたときの対処である。この他、素材の販売や買い取り、解体などの仕事がある。
イリスは受付に座って対応をしていた。
「この依頼を受けたいのだが」
「かしこまりました。角ウサギの討伐ですね。お気をつけて」
こんな感じで。
「あぁ?なんていった?」
「いったことも理解できないなんて、悪いのは頭と耳どちらだろうね?」
「喧嘩売ってるのか?」
といったように血の気の盛んなか人たちはすぐ喧嘩を売る。乱闘でもされて、ギルドが壊れたり、怪我人が出ると危ないので、これを止めるのは受付であるイリス達の仕事である。
「皆様、他のかたの迷惑になりますので、お止めください。」
ローズが仲裁をしにいった。
こういうとき、このような言い方をすると、火に油を注ぐことは目に見えている。案の定、
「お嬢ちゃんは黙ってな!」
「何様だ⁉」
絡まれるのはお約束である。
一人の男が目の前にいる男を殴ろうとすると、ローズが間に割り込み、男の拳を止めた。
…物理で。
「お や め く だ さ い」
にっこりとただし、目は笑ってない笑顔でローズは彼らを見てそういった。うっすらと彼女の周りに冷気が漂っているのは全くもって幻覚ではない。薄い氷が彼らの足下から上の方へ体に沿ってはっていく。
「「……失礼しました。」」
そのまま観念して穏便に収まった。
「凄いな。」
アルフレッドさんから話しかけられて驚いた。
「身体強化なしであの拳を受け止められるなんて、人は見かけによらないな。」
「まぁ、ローズですからね。」
ローズは可愛らしい外見で中身を綺麗に隠している。虫も殺さないような外見に反してすごく強い。魔法を使わない物理攻撃のみだと私は全く歯が立たない。
…昔、ローズは、拐われそうになったことがある。可愛らしく、華奢な外見のローズは簡単だと思ったのだろう。ローズは無表情で相手を返り討ちにしていた。冷たい目で、背負い投げで倒した相手の股間をヒールで思いっきり踏んだのだ。騒ぎを聞き付け駆けつけた騎士達は股間を押さえて青くなっていた。…なむなむ。
何日かたったある日、ふと、クリスさんがいった。
「今日は人が少ないわね」
「そうですね。」
「これなら仕事は早く終わりそうだから、みんなでご飯にいきましょう?」
「いいですね~。」
なんて会話をクリスさんとしていた。
すると、主任が慌ててこちらにやって来た。
ローズのことをあんな風にいっていましたが、その現場にイリスもいて一緒に返り討ちにしています。
最後まで読んでくださって本当にありがとうございました。