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イキガミちゃん  作者: とうふーしゃ
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第0話 イキガミ様の独り言

 古くより世界には死神というものが存在していると考えられていた。もっとも現代社会ではそんなもの存在しているはずがないとのたまうものも増えてきてはいるが。


 しかし現実に死神がいようといまいと関係なしに人間には死が訪れる、その死ぬということに関して人間が感知できるのはせいぜい生物学的なことが限界であろう。

 

 人が死にそうである、何故か、それはガンに侵されているからである。

 

 人が死んだ、何故か、それは脳から出血し圧迫され壊死してしまったからである。


 死という現象に生物学的な理由をつけるとすればそうなるのであろう、そして今人間は着々と死へ至る原因を潰してきている。昔は高い致死率を持っていた天然痘も撲滅されてしまった。それゆえに死神の仕事にも変化が訪れている。


 古来の死神は君たちが想像するように死を招く存在ではなく死に至る人間の魂を安全にそして確実に天に還す、そのような者たちであった。しかし現に彼ら死神が降りた人間は死ぬのである、例えどんなに外見が元気で健康に見えても。死を招き人を殺す存在であると考えても仕方のない事である。


 だが、それも昔の話。現代ではもっぱら死を与えることも司っている。それは人間が死へ挑戦しているからであり、適切な寿命での死を迎えなくなってきているのだ。だから死神が命を刈り取り天に導くまでを業務として行わなければならない、彼らも仕事が増えて大変だと嘆いていた。


 現代日本ではブラック企業がはびこり労働に苦しんでいると聞くが彼らも似たようなものだ、当然彼らには『過労死』等というものはない、死神なのだから。


 だがそんな中で一つ、新たな概念が生まれつつある。それが僕たちイキガミ、とはいっても元々死神という呼称を人間が創造したように僕たちには決まった呼称が与えられていない、何せ概念だから。だから僕たちは死神をもじって『イキガミ』を自称しているだけ。


 僕たちの業務は死神が刈り取った後の余った命の再利用、今やどこでもエコエコと騒がれる時代だからね余った命を捨てるなんてことはせず配っているのさ、こんな長寿世界になってしまった現代にも不幸なことに若くして死んでしまう人間がいる。


 そんな彼らに最後のチャンスを与えるのだ。僕たちの裁量で1秒から1年、10年だって50年だって与えてやれる。ある死に瀕した権力者に僕が命を授けに行ったときには泣いて懇願していたよ、散々悪行を働き人を殺した権力者も自分の死は怖くて怖くてたまらなかったようだ。


 そんな彼に1分間を与えた。絶望に満ちた顔で怒鳴っていたね、もっとよこせって。僕は面白い人間が好きだよ、面白い人間には僕の権限が及ぶ限り多くの時間を与えたいと思う。ただ死に瀕しても自分の行いを見つめなおすこともせず、チャンスを与えたものに怒鳴り散らす阿呆は嫌いだね。


 あ、そうそう僕らの仕事にもノルマというものがあってね、それを達成しなければあまりホワイトとは言えない仕事が待っている、例えば地獄の監視員とかがそうだあれはひどい、何がひどいって匂いがひどい。死に瀕した人間のにおいもなかなかひどいものがあるが、それをはるかに超えるあの匂いが僕にはとても耐えられるものじゃないので、勘弁願いたい。


 だからと言ってだれにでも命をホイホイ配っていいわけではない、理由が必要なのだ。此奴はこのような人間なので〇〇秒くれてやった、といった具合に報告しなければならない。そうしなくちゃやっぱり懲罰で...


 大体僕に与えられるノルマは地上にいる一か月の間で15日分。最低でもこの程度の命は与えてこなくてはならない、天界の営業マンみたいなものである。多く渡す分には問題ないが10年を超えるあたりから一度上に問い合わせなければならないという決まりがある。


 権限を乱用して不老不死の人間を作ろうとしたバカのせいでね。僕自身も人間が神の力を借りて人間がどこまで生きるかは興味があったけどまさか本当にやろうとするとは、結局その人間は1000年の寿命を与えられて今も生きているらしい、噂だけど。

 

 ああ、こんなことを綴っているうちにまた仕事に行かなければならない。

 

 全く多忙を極めているというものだ

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