プロローグ
いつになったら終わるのだろうか。
「眞部!ちゃんと歩け!歩けないのなら今すぐ降りろ!」
教官に揖斐られながらも俺はひたすらに山の中を歩いている。
どれくらい歩いたのだろうか。一日一食、その食料も僅かながらで睡眠も一日ニ時間程、俺は既に体力の限界を迎えていた。
「…ウッ…」
突然視界が真っ白になり、その場に倒れ込んでしまった。
「眞部⁉︎どうした⁉︎衛生、衛生を呼べ‼︎」
朦朧とする意識の中、教官や同期らが喧喧囂囂と叫んでいるのが微かに聞き取れた。
………少しだけ寝かせてくれ………
こうして俺は眠りについた。
どれくらい眠っていたのだろう。目が覚めると、俺は大きな石の上で蹲った状態で眠っていた。
「寝てしまってすみません‼︎」
俺は石の上から飛び起き、冷や汗を滲ませながら叫んだが、辺りに人の気配はなかった。
恐る恐る顔を上げ辺りを見回してみるが、先程までいた教官や同期らの姿は見当たらなかった。
「えっ?まさかの置いてけぼり?いやでも公務員がそんな事すれば大問題だしそんなこと…」
ふとさっきまで寝ていた石に何か描かれている事に気が付いた。
「なんだこれ?ギリシア文字…みたいな……読めん…」
石の上には文字が円形に描かれていた。
とりあえず、状況の整理をしよう。俺は行軍中に倒れ、目覚めたら大きな石の上で寝ていて、辺りには誰もいなく、石にはギリシア文字みたいなのが円形に描かれている、うんよくわからん。
場所は草木が生い茂っていて先程いたところとあまり変わりはない。
「あれ?俺の銃は…?それに装備も…」
装備がないことに気がついた。辺りを見回してみても見当たらない。
一旦持ち物の確認だ。
そしてポケットに入っている物を取り出した。ハンカチティッシュに小銭622円、煙草19本、萌え絵の描かれたジッポライター。 服装は上下迷彩服、迷彩柄の手袋、そして半長靴である。
「とりあえず歩くかぁ」
じっとしていても始まらないので、木々の生えていない一本道を歩き始めた。