第36話 少年少女
俺の記憶にある彼女とはあまりにも掛け離れて、でも言うほどに変わらない。
強いて言うなら肌の色と髪の色、そして耳だけだ。
そばかすがなくなったのは、そして眼鏡をしていないのは...彼女の本来の姿だから?
民族衣装を思わせるぴったりとした紫紺の服に、雪の結晶を思わせる白い幾何学模様のストール。
全くの別人と言われた方が納得するだろうか。
身体や輪郭のどこかが違っていたら、きっと同一人物だと確信は持てなかった。
...
「「.........あのっ」」
「「あ」」
...
「「そのっ──」」
何か声を掛けようとして、同時に声をあげてしまい気遣うように押し黙る。
姿形や種族性別が違えど、なぜか俺達は似た者同士で。
少し離れた場所で首領とワンダさんに確保され、不機嫌な面構えで俺を睨み続けるココを尻目に。
お互い何を言えば良いのか...言葉が見つからなかった。
お互い、何故此処に居るのか。
お互い、一体何者なのか。
聞きたい事も言いたい事も沢山ある。
でもそれは俺にとってほんの些細なことで、
彼女が俺達の心配して加勢しに来てくれた事に間違いはないはずだったから。
「...ルンナさん」
「はい...」
俺達は手を伸ばせば触れ合う距離で、互いに歩みを止めた。
ラヴィネは親子三匹で、俺とルンナさんを挟んで四人とは反対側の方で寛いでいる。
「その...これをお返しします。使いきりと聞いたら、なんだかもったいなくて」
腰から下げてた魔導具の留め具を外し、彼女の手を取って掌へ乗せてそっと握らせる。
「ぁ...」
出発前に彼女から受け取ったように。
触れ合う手から伝わる温度が、微かに震えたようで。
彼女は吸い込まれそうな程綺麗な瞳で、俺を見上げ。
魔導具を受け取るとそっと胸に抱いて目を閉じて、
静かに微笑んだ。
「...ありがとう、ございます」
「いえ、こちらこそ」
顔がやたらと熱くて、心臓が張り裂けそうな程高鳴る。
おぼつかぬままの視線を泳がせ、照れ臭さと恥ずかしさで綯交ぜになった感情がどうにかなってしまいそうだった。
きっと顔が赤いのは近くで見てる彼女にバレてしまっているだろう。
「あはは...」
高鳴る鼓動を隠すのに愛想笑いで精一杯だ。
「......ん...」
俺の視線に気付いた彼女が恥ずかしそうに身を捩り、目を伏せ、紅潮した頰を隠すよう...俯いた。
濡羽色の髪が揺れて、果実のような香りが鼻腔をくすぐる。
「むごぐ!んぅっ!!んむうーーーっ!!」
横の方で剣が鞘から抜き放たれた音がしたが、三人に口を塞がれた挙句取り押さえられたので特に気にしなかった。
「あの、あのね......わたし──」
ルンナさんが意を決して口を開いたその時。
「あおおおおおおおおん!!!」
ステラが突然、今までに聞いた事の無い声で叫んだ。
俺は山刀を引き抜きながら、素早く後ろを振り返った。
超越者の遺体が
輝きとと共に消え失せた後
空を突き抜けるように伸びた絵もいわれぬ光が
一筋の雷のような速さで俺の頭に襲いかかった。
「タリオンくん!!!!」
「タリオン!??!」
「きゃひんっ?!!」
辺り一面を覆い尽くすような輝きの中で、電気のようなものが俺の頭の中で弾けて。
記憶の奔流が荒れ狂う海のように絶え間なく神経を襲いかかった。
声すら出せぬ程の耐えがたい光の渦の中。
破壊と再生を繰り返し、己が存在の薄皮一枚隔てた内側で突き破らんと外側に向かい。
断絶と接続を繰り返す意識の中で、割れそうな程に膨大な力が荒れ狂う。
不思議と痛みは無かった。
これまでの自分に追従するように一つになる。
キリルと、彼の手によって殺された全ての者の記憶と力と──
全てが
全て一つに繋がっていく。
(´ω`)此処まで読んで頂きありがとうございます!
Tipsは不定期ですが前回載せた感じの風に統一します。
近いうちに修正、出来たらいいな...orz




