第3話 葉っぱ一枚
あれからさらにもう一週間もあればこの周辺に生えている草木と菌類。動物と魔物の類を把握するのは簡単だ。
人一人狼一匹を養うことくらいどうてことはない。
今日の獲物は猪だ。余った骨と肉は、ラヴィネが不思議な力で凍らせた。
ウチの子って凄い。
恐らくラヴィネは生まれながらにして魔力を持つ...魔獣だったのだろう。
なればこうした不思議な力を持っていたとしても不思議では無い。
むしろ教えてほしい。
俺も魔法が使いたい...。
ともあれオークの死体から拝借した斧で木材を切り出し。軽く虫除けの煙で燻した後、コテージを作り出す事だって出来る。
ある場所で砂鉄ともう一つ。水で固まる石灰のようなものが見つかったので、作成に踏み切った。
ちゃんと地面だって選んで、石灰擬きと集めた砂鉄に砂を水で混ぜて均一に混ぜ込み。さらに石と砂を敷き詰めて岩を転がして慣らし。
柱を刺して基礎を丁寧に作る事だって忘れない。
平面を正確に測る事は出来ないが、丸く削って磨いた木を置いて、一方に転がる事は無かったから大丈夫だと思う。
...多分。
オークが持ってた無数のボロい剣を分解して釘代わりに。蔦もしっかりしたものを選んで仕上げていく。
天候に恵まれた事も幸いし。コテージは出来上がった。
八畳程度の土間付き囲炉裏付きの部屋がひとつと、物置き部屋が六畳程の小さな小屋だ。一部屋毎に窓も二つ作ってある。
トイレは外に作ってある位置から変えれなかったが、今のところ不便はない。
風呂はないが、沸かした湯を使ってムクロジ擬きで身体と髪を洗う。
ヘチマもどきのたわしが役にたった。
ついでに服も洗って着るものがないのでマント一丁に葉っぱ一枚だ。
葉っぱ一枚あれば良いとは誰の言葉だったか。
前世なら確実に不審者で捕まるだろう。
いやマント一枚追加したところで捕まるのに変わりはないか...。
ともあれこうして拠点をアップデートさせて生活の質はさらに向上した。
今日ほど土木建築に携わる仕事をしていて良かったと思うことはなかった。
無かったけど...。
「相変わらず村っぽいものは見つからないなあ」
「きゅぅん...」
俺達は困っていた。
季節は秋。
獲物に困らず。歩けば自然の実りが容易く手に入る時期だ。
だがその目前に迫るのは冬。
自然の恵みも獲物も一気に少なくなる。
その前に人里を見つけ、なんとしてでも必要な衣類と道具に食料。さらに防寒の為の外套に寝具を買い揃えたい。
その為には換金用の魔石や獲物の肉と毛皮が要るが、今のところ全て消費して捨てている。
薬草もすり潰して食事に混ぜてるくらいだ。
お陰で俺もラヴィネも病一つない。
しかし、あれだけあったオークの魔石もいまや半分くらいになってる。
記憶の中にあるオークの魔石と違って一回り大きくて色も良い。
なんとかして売りたい。
しかしなあ...。
この森の中一帯を探しても見つからず。
なればと川を下って森を出たあたりを探しても見つからない。
そうなるとあとはもう一日以上拠点を離れる覚悟を決めて森を離れるか、森のもっと深い場所に潜るかだ。
案外深いと思ってたら別の場所に出るかもしれない。
ラヴィネはあれからひと回り大きく成長した。今では俺の軽い走りに付いて来れるようになってる。
決断するなら今...か。
(´ω`)v 3000pv達成ありがとうございマッスル!