第10話 食事と名前
夕暮れの森。
月と星が疎らに現れ、夜の闇が生きる者全てを包み込まんと次第にその身を広げる頃。
オークの骨で出汁を採り、岩塩とハーブで味付けした肉ときのこの野草汁を頂く。
血抜きされ、丁寧に処理された肉の旨味が、きのこと野草の味と骨の出汁とが合わさり確かな満足感を味わった。
子狼には、軽く火で炙った肉を食べさせている。
デザートは洋梨擬きだ。
記憶の中にある洋梨のような確かな甘みと、しっかりした歯ごたえがあってこれも実に美味しい。
細かく刻んで少量を子狼に食べさせると、シャクシャク音を立てて喜んで食べた。
食事を終えると簡易井戸の水とムクロジ擬きの実で、鍋と包丁代わりの短剣、即興で作った食器を洗う。
ついでにブロードソードも洗っておこう。
洗った水は砂と石で簡単に作った濾過装置の囲いを通して川に戻す。
環境汚染?
...知らない子ですね。
嘘ですすいません川下の人ごめんなさい。あとで濾過装置に炭も加えますんで...。
しっかり水を切って、適当な岩に逆さにしてかける。
ムクロジ擬きの実も名前はあった筈だが、その辺が俺の頭に入ってない。爺ちゃんが実利重点で教えて名前をちょろっとしか言わなかったせいでもある。
まあ、使えるからいいか。
そうして、一息ついた頃。
俺は白いふわふわの小さな身体を抱き上げ、満天の星空の下で声も高らかに宣言する。
「よし!今日からお前は伯方のおおかm『ガブッ』〜〜〜ッッ!!!?!」
鼻を噛まれた。解せぬ。
わかったよ、じゃあ...
「ゆき」
無難と思われる線をつく。
だが、尻尾を下げて『いや』とばかりにつーんと顔を背ける。
むむむ...お高い女め。(持ち上げた時に確認した)
「しろ」つーん...「ぽち」つーん...
「お手」はしっ「よーしよしよし」
お手をしたので撫でてやると気持ち良さそうに耳を伏せて目を細める。
と思ったら「違うでしょ!」とばかりに俺の指をかじかじと噛み付く。...ふっ、ノリのいい奴め。
噛みつかれた時もそんなに痛くないけどそこはまあノリである。
明らかに言葉理解してる感じがあったが、確信に代わり感動する。
うちの子はとってもかしこくて世界一可愛い。(親バカ)
そのあとも思いつく名前を出すもお気に召されず。
ま、まあ名前なんてそのうち思いつくさ。
先延ばしとも言う。
一人と一匹は、木材で覆われた洞穴の中に入ると、寄り添うように眠った。
マント洗ってまだ乾いてないからちょっと寒いなあ...。
でも、この子は暖かいなあ...ふふふ。
ぐぅ...。
|´ω`)