第9話 帰還
あれから遺体を全て燃やした後。
オークを狩り尽くしてさらにボロボロになった大剣と適当な武器を墓標にして、灰と骨になった遺体を埋めた。
...随分殺風景な墓だ。
墓に情緒が必要かと言われると凄く悩むが、寂しすぎる。
備える酒も食べ物も無かったが、近くに綺麗な花を幾つか見かけたので土ごと掘り返して二つの墓へ並べて移す。
色鮮やかで綺麗な花が、ボロボロな大剣の墓標に寄り添う事で、ほんの僅かな温かさを感じる。
うん、まだ寂しいかもしれないが...これで少しは良くなった。
最後に手を合わせて黙祷を捧げ。子狼はしっかりお座りして、じっと二つの墓を見つめ続けた。
...貴方達の子が立派な狼になるまで、必ず俺が守ります。どうか安らかに。
オークの群れには言うべき事が思い浮かばなかった。
殺した人間が美麗字句を並べたところで白々しく、あの場では殺す他無かった。
只々、手を合わせる他無いだろう。
「......さあ、帰ろう」
「きゅうん...」
子狼は歩きながら何度も何度もお墓を振り返って時折こけていたが、やがて墓が見えなくなると足取りもしっかりして、俺について来た。
朝も早くに起きて今に至るまで、もう日は中天を通り過ぎている。
けど、このまま歩けば日が沈む前には拠点に辿りつくだろう。
焦ることはない。
拠点に戻る道のりを、一人と一匹でゆっくり歩く。
「...お、これ砥石に丁度いいな」
戻って来た河原で都合のいい偶然に出会し、拾った平らな石を鞄に放り込む。
あれから拠点に戻る途中もせっせと生活に必要なものを集めていた。
鞄の中には採取した岩塩に、胡椒代わりになる貴重な種子とハーブ。怪我した時の為の薬草。
果物に関してはオレンジのようなものと洋梨のような外見をしたもの、程度が良いのを幾つか手に入れてある。
これは故郷の山で爺ちゃんと二人で食べたものだ。毒は入っていない。
さらに最初に採取していた食べられる野草ときのこ。
ムクロジに酷似した性質と外見を持つ、洗剤と石鹸代わりの実。
トイレで使う紙代わりの葉っぱも何十枚か入れて、匂い消しになる花も土ごと摂って来てある。
お陰でもうそろそろ鞄の容量に限界が近い。なお毒草は既に捨てた。
オークの約三分の一匹分の肉と大量の大腿骨を、全ての遺体から回収した魔石と一緒に、風呂敷のようにマントで包んで持ち歩いている。
鞄...欲張ってもう一つ二つ持って来ればよかったなあ。
今更後悔しているが、もう遅い。
矢も結構使ったし、もう一個矢筒...とさらに今更すぎる事を考えるあたり俺は現世でもポンコツぶりが治ってないようだ。
そういえば...
「...本当に今更だけど、おまえの名前どうしようか?」
「...きゅぅぅ、ひゃふ!」
一人と一匹でこれから生きていかねばならぬ以上、何時迄も狼でお前だのおいだので呼んでいられない。
俺は河原にある手頃な岩に腰掛け、尻尾を振りながら近寄る子狼を抱き上げて膝に乗せた。
うーん...うーん...
名前
狼...
「ウルフ金ぐs『ガブッ』痛あああッ!?」
くそう駄目か。
1000pv越えあざーーっす!!!( _´ω`)_