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プロローグ
この世界には怖いものがありすぎる。
だから、いつもおとなしくしている。
(――姉妹なのにこんなに違うものなのねぇ)
言葉は刃だ。
それは、いつだって、襲ってくるもの。
口をひらくよりも、耳を澄ますことをしなければ。
いち早く、逃げるために。
(――お母様も心配でしょうにねぇ)
言葉と裏腹に、その目は楽しげで。
触れてはいけない。
あれは汚れたものだ。
息をころして、やり過ごさなければ。
まるで、白い雪にうもれて、身を隠すウサギ。
それが、私のまいにち。
時々、胸の真ん中を冷たい風が吹きぬけていくような気がする。
けど、やめるわけにはいかない。
――生き残るために。
ずっと、そう思っていた。
昨日まで、ずっと。