私、天国に行けたんだよ
その晩、博美はなんともいえぬ奇妙な夢を見た。
自宅の冷蔵庫の前が壇になっていて、そこに女性と思われる遺体が仰向けに寝ていたのだ。
なぜ性別がはっきり分からないのか、それは顔に布が被せてあったからだ。
博美は感じていた。
(これは昨日亡くなった義妹の静子さんに違いない⋯⋯でも何で私の所に?)
そう思っていると、その遺体と思われていたモノが動き出した。
異様に長い箸で何かを取ろうとゆっくり右腕を動かしているのだ。
顔に布を被せられた「それ」が異様に長い箸を持って腕を動かしている光景は、博美のトラウマになってしまった。
博美は翌日すぐにそのことを守に話した。怖い夢を見た時は誰かに話した方が良いのだ。
守は少し考えてから口を開いた。
「恐らくそれは天国で使われている箸だよ。天国に行くような優しい人はお互いに食べさせ合うから、長くても問題無いんだ。地獄に行くような人は自分のことしか考えていないから、自分では長すぎて食べられないんだ。」
そうなんだ。全然知らなかった。全然知らなかったのになんでこんな夢見たんだろう。
もしかしたら、「私、天国に行けたんだよ」っていうメッセージだったのかな⋯⋯。と考え事をしていると
『ピンポーン!』
と突然インターホンが鳴った。賢治だ。こんな朝から来るなんて聞いてないのに。まだ8時前よ。
「母さん起きてますか?」
賢治は三枝子に聞きたいことがあって来たそうだ。お墓のこととか、いろいろな手続きのこととか、法事のこととか。そうだよね、いきなりこんなことになって何も分からない状態だもんね。
三枝子はまだ起きて来ていなかったので真奈が起こしに行った。
三枝子と守と賢治で難しい話をすることになったので私は少し離席して葬儀に行く準備をした。
しばらくして、話は終わったみたいたが、一緒に斎場に行くことになったらしい。いつの間にかもう10時。朝は時間経つの速い。
うちの車は4人乗りなので、真奈は私の膝の上。10分ほどの距離なので問題ない。
助手席に乗っている賢治の顔は悲しんでいるようにも見えたが、何かを考えているようだった。
実はこの夢の話、前にも書いたことがあるんです。ノンフィクションです。箸の話も聞いた時はびっくりしました。
罰当たりそう⋯⋯。
次回急展開!!!!!!!