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訃報
戸越博美はとても真面目で、人一倍頑張り屋な女である。今日もコンビニでアルバイトをしている。
夫は無職で、娘は三歳。私が頑張らないと!
博美は人を責めるということをしない。もし人を責めそうになった時は、その原因が自分に無いかを考える。少しでもあれば自分を責めるのだ。
だから、夫の無職も責めはしない。彼はいつも頑張っているから。
そんな博美でも、ふと思う時がある。
「真奈が居なければもう少し遊んでいられたのになぁ」
真奈とは博美の娘の名前だ。博美が十七歳の時の子である。
「ああ、こんなことを思うなんて私はなんてひどい女なんだろう」
真面目。
頑張り屋。
博美を縛り付ける言葉ばかりだ。
『ピリリリリリリリリリ』
携帯電話が鳴った。
内容は、義妹の訃報だった。