手がかりはオートマタ(前)
妙に長くなったので2つに区切ってみました。
昼食を食べて暁星堂に戻るとアメリ叔母さんが店の前で待っていた。
「お昼食べに行ってたのね。その顔を見ていると片づけは順調みたいでよかったわ。」
どうやら髪にほこりが付いていたままだったらしい、恥ずかしい。
2階の祖母の部屋の様子を見せて魔法鞄から出したベッドマットを設置する手伝いをしてもらった。
寝具セットを魔法鞄に入れているのを驚かれたけど、大きなものだし気に入ったのはなかなか手に入らないし買うのも手間だしと答えたら笑われた。
小物は気に入ったものを手に入れられるけど大物を買うのはいつも覚悟がいるものだし。
これがあれば野宿でもシャンタルが作ってくれる簡易土家屋で心地よく眠れるのに。
掃除を終えてすっきりとした店舗に戻ると置かれた木箱をテーブル代わりにして淹れたお茶と茶菓子を置いた。
店舗には接客用のテーブルもあったのだがそれぞれ部屋の隅に動かされていたから手間を惜しんだ。
「明日メッスに帰るんだけど思い出したことがあってね。エマ、父さんのオートマタ覚えている?」
「ルクーのことは忘れないよ。作業場の隅に置いてあったけど動かなくなったんだってね。」
「そう。いつか直すと言ってたんだけど。私はそういうのわからないし。」
さすがアメリ叔母さんの選択はいつも迷いがない。
ルクーは祖父の使っていたオートマタ(機械人形)だ。
オートマタはぜんまいなどを動力源とするので器用な人なら魔法使いでなくても作ることが出来るが動作は単純なものがほとんどだ。
ホムンクルスやゴーレムは魔力で作るものだから作ることに対しては厳しい規制がある。
まぁ過去に作成者の統御を外れたゴーレムが暴走したりとか狂気の錬金術師がホムンクルス研究のため法を犯しまくったとかの過去があるから仕方ない。
オートマタは手先が器用であれば普通の人間でも作るので買ってきたオートマタを外殻に魔力結晶を動力源とする合わせ技を用いるものが出てきていた。
もっともオートマタに魔法加工を施すのは手間が余計にかかるし作れるならゴーレムのほうがよほど簡単なので見かけたことはない。
その手間がかかってるのがルクーなわけだけど。
(ここも今のところ脱法・・・。私の周りはどうなっとるのか・・・)
「でね。思い出したんだ。自分に何かあってこの家を処分することになったらルクーを起動しなさい、って。」
私の表情にかまわずアメリ叔母さんはクッキーをひとつ口に放り込んみながら軽く言った。
なんといきなりの重大情報。どうして前回部屋を開ける前にそれを言わなかったのか聞いたら
「忘れていた。」とあっさり白状した。
今にして思い出すとルクーは祖父の「魔改造」でオートマタとしては規格外なレベルに到達していたのだと思う。
ヌヴェールで見たオートマタはピアノの自動演奏(プログラミング済の曲のみ)とか人が入れたお茶のお茶出しとかくらいの作業をして見せるくらいだったのに、
祖父は作業する時にはいつもルクーを使っていた。幼いころの思い出の祖父の記憶とルクーは常にセットになっている。
ルクーは魔力結晶となんらかの魔法陣の合わせ技なのか道具を磨いたり必要な素材を地下室の倉庫に取りに行ったり、淹れたお茶を暁星堂でお客に出したりしていた姿を覚えている。
ルクーなら手がかりなり仕組みなりを記憶させられているかもしれない。
だがルクーは今は破損して動かない。
「アメリ叔母さんありがとう。今日は部屋の方を片付けたいから明日でもルクーが直せるかどうか見て見るね。」
「気を付けてやりなさいね。父さんのことだから地下倉庫にもなんか小細工してるはずだから不用意に入らないように。それとルクーの修理にかかるならエリックをしばらく連れて行くから。」
「どうして?エリックに何かあるの?」
「ちょうどこの時期に氷狼が群れをつくり始めるのよ。大きくなる前に退治する予定だったから助っ人にね。ついでに鍛えといてやるよ。かわいい姪を任せるわけだし。」
「そうだね。ハーメルンに行く必要もでてきたからよろしくお願いしようかな。」
エリックがはっきりとこの「わが家探索」プロジェクトに加担するか返事は聞いていないけどたぶん叔母さんはエリックが断っても引っ張っていくだろうし。
憧れのA級ランカー狩人に直接鍛えてもらえる機会だ。叔母さんの旦那さんも同じA級だったしエリックもきっと涙を流して喜ぶだろう。
何よりブルグの街で魔道具屋を開いてほしいといったのはエリックなんだから。
とりあえずエリックの冬は忙しくなりそうだ。
(せめてポーションや薬の類はたくさん持たせてあげないとね。)
魔石と魔力結晶の違いは強いて言うなら原石と加工済の違い。
魔石を結晶にするには結構な魔力を使うから職人ではなかなかにできない。
大きな魔力結晶は富裕な貴族しか持っていない。




