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脱法魔法物件かよ・・・

やっとタイトルに到達しました。

「うぎゃぁ!!やだ、これ!!」

扉を開いたと同時に顔面に飛びかかった羽虫をエリックがビシャッと払い落としてくれた。

「ありがとう!ってかなんかデカイ・・・」

黒い悪夢の存在がよぎって泣きたい気持ちで目を開けるとそこには・・・


ワサワサと茂った原生林(ジャングル)が広がっていた。


しっとりと濃い緑に艷めく肉厚の葉が生い茂り、吹く風はブルグでは有り得ない熱をはらんで頬を撫でる。

(あ?)

振り向くと扉の形の向こうには何という事もないさっきまでたっていた木でできた廊下が見える。

でも前を向けば広がる密林。なんじゃこれ?

「緑の気が強いな。土が息づいておる。」

エリックと私が唖然として前後を見比べているのにエリックの肩の上のシャンタルが目を細めてポンと地表へ降り立った。

「伝わるのぉ。ここちよき地の波動が我の身に流れ込んでくる。」

うっとりと言うシャンタルの体が瞬く間に小型犬から中型犬のサイズに変わりエリックがまたぎょっとする。

土の妖精の眷属であるシャンタルにはこの環境がたまらなく心地よいものらしい。


「蔓に気をつけて。進むわよ。」

アメリ叔母さんの言葉を聞いて外していたゴーグルを装着した装飾品のようにつけられた魔石のひとつに指先で軽く魔力を流しこむ。

魔力の痕跡がわかるように仕込んだ魔法陣が起動していくつかの赤い光点が見えるが今はそう近くはない。

ちなみに私に敵意のないシャンタルは青く光り、魔力の少ないエリックとアメリ叔母さんは薄い水色に光って見える。

足元を見れば黄色に光るものが見えるのでしゃがんで確認する。肝臓の病に聞く苔が生えていたが採集は見送る。


「エマ。どう?」

「50メーラ先にちょっといるかな。種類まではわからないけど。」

「そう。じゃ進むわよ。エリックは背後に警戒してなさい。」

アメリは道に絡まるつる草を片手剣で切りながら進む。

足元はアメリたちが切り開いても長身な分垂れ下がるツタや張り出した枝が妨げるエリックの頭に状態異常予防の魔法をかけてあげた。

「ねぇ、叔母さん。ここはおじいちゃんの部屋よね。」

「まぁ、そうでもあり、そうでもなし。」

「部屋なのに・・・どうして50メーラも進めるんだ?せいぜい2.3メーラじゃねぇ?」

「気づくの遅い。」

「まさか転移陣?」

「ようやくわかったわ。叔母さんがこの家をすぐに人手に渡さずに私に住めって言う理由が。」


空間拡張魔法で倉庫を広く使うことは届出さえしていれば罰せられはしない。

ただ維持には膨大な魔力が必要だから常時展開するような人は庶民にはほとんどいない。

貴族や広大なネットワークの商会なら実行するかもしれないがそれでも魔法維持のための人員を要すると聞いたことがある。

他者を陥れる企みをもって転移陣を設置すれば罪に問われる。

が、転移したということはこの空間はブルグでないから家から出ない限りブルグの法は適用されない。

適用するかもしれないけど、そんな魔力の無駄使いをする人がいないからおそらく想定されてないだけだと思うけど。

厳重な封印対策を施されたこの異空間はあくまで()()のブルグ法令の範囲内に収まっている。


「合法だけど、限りなく抜け穴とこじつけの脱法魔法建築。」


特に魔物らしい魔物は出なかったし、せっかくなので見つけたセラニアの実をいくつか採取しておいた。

この実は魔法道具を精製するときに溶媒として使用するのでいくつあっても助かるありがたい実だ。


「この転移陣が厄介なのは部屋に対して一つじゃないってことなんだ。私が前に父さんと入った時ここはエッシェンバッハの青の洞窟だった。」

エッシェンバッハの青の洞窟はパールスライムの生息地。

魔核は装飾にもなり体液は麻痺効果と麻酔効果を持つ素材。なんと一粒で複数美味しい仕様。

「おじいちゃんは家にいながら採取するためにそんなことを?」

「まあきっかけはそうかもだけど。父さんの魔力でブルグへの侵入を防いでたんなら早く転移を切らなくちゃいけないんだけど私は魔法使えないだろ。」

Aランカーの叔母さんだが魔法はほぼ使えない。

となるとこの家の主が死んだ今魔力供給はどうなっているんだろう?

「転移先の魔素(マナ)の多いところを選んで吸収する仕様、だとか言ってた。ちんぷんかんぷんで聞くそばから忘れてごめんよ。」

転移先のマナが枯渇しない限り転移陣に魔力が供給される半永久機関、環境にも優しいエコ仕様だった。


誉めたくない。


「私に設置した転移陣を書き換えて無効化しろ、と。もしくは魔法陣を制御しろ?」

「当たり~。このままじゃ人に貸したり売ったりできないし。あんたが帰らなきゃギルドに依頼して国から魔法使い派遣する予定だったのよ。父さんもそう言って料金貯めてたしね。」

一応後始末については考えていたらしい。ちょっとだけ安堵した。

しかしこのままではうっかり扉を開けることもできない危険物件なのは変わりない。

「エマが住むなら解除するも良し、使い勝手いい転移陣残すも良し。住みやすく改築しておくれよ。」

改築の意味合い違う!!と内心でひとり突っ込んでおく。


「私が帰ってもエリックが手伝ってくれたら助かるな。たまには私も来るしエリックも鍛錬になるしエマが魔法道具屋してくれれば助かるよね。ね!」

エリックはまさかの時のボディガード扱いだとでもいうのか。憧れのAランカーの1対1(ワンオンワン)のプレッシャーをはねのけるのは難しかろう・・・。


「あ、でもここやエッシェンバッハみたいなのなら危険度は低いすよね。」

エリックが安堵したのか不満なのか半々な表情でアメリに問う。

叔母さんは今度こそはっきりと目をそらし、そして答えた。

「実は・・・3階にはハーメルンにも繋がってる部屋がある。」

「火の山っ!今も熔岩が沸いてるよね?」

最高品質の魔石とサラマンダー素材が採掘採取可能地域。フェニックスの亜種ニアフェニックスの繁殖地、火系統の魔道具の作成者にはあこがれの聖地の名前が飛び出した。

行くと熱いし、火傷覚悟の採集行は必須だが私だっていつか機会があれば行きたいと思っていたけどそこを3階に置いた家で生活するのは話が別だ。

それが繋がった家が街中の商業地域に建っている。ヤバいとしか言えない。


「結界が綻びたら即火事じゃね?俺ん家丸焼けじゃねえか?」

エリックの顔もわかりやすく青ざめている。シャンタルがからかうようにフサフサの尻尾で顔を撫でまわすけど払いのける気も起きないようだ。

「エッシェンバッハは水の地だから。他にもナイアスの泉もあるとか聞くしね。」

ナイアスの泉は大地母神と娘の春の女神の水浴場として神話で語られる名勝だった。

消火活動に使う水には不自由しないとでも言いたいのか笑えぬ。


「そんなん気楽に言うな~!!」

とりあえずおじいちゃんの家はエマのものになることに確定しました。

明日も更新できるようにがんばります。

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