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アラクネの森、絶対絶命

魔物の森の所在が特定できたので納品のついでにギルドに出向いて周辺の魔物情報の収集をすることにした。

エリックとヴィヴに店番をお願いしてジョルジュを連れてギルドに赴く。

ギルドに行くならエリックでもいいのだけれど文書を読み込むような作業はエリックには不向きだからの人選だ。

今日は街中の活動だからジョルジュもプレートアーマーではなく普通の服装をしている。ブルーのシャツに黒いスレンダーなパンツを身に着けて歩く姿は何人かの娘さんが振り返るほどに爽やかだ。

ついでに私に向けての視線にはもう少し温かみが欲しい気もするけど多くは言うまい。


「ピッパちゃんが周りに被害を及ぼしたりしてないか確認したいのもあってね。」

「ピッパちゃん・・・・。エマ様アラクネの話してるんですよね?」

「あ、おじいちゃんおばあちゃんがアラクネに名前つけてたみたいなのよね。」

「その名前がピッパちゃん。」

「うん。彼女私たちよりもよほど長生きしてるでしょ。あ、ピッパちゃんじゃ失礼かな?ピッパさんのがいい?」

「敬称はどうでもいいと思いますけどよりによってピッパなんてどうしてピッパ。」

「どしたの?ブツブツ言っちゃって。」

「・・・・・母方の曾祖母がピッパって名前だったんですよ。ピッパ婆ちゃんですよ。」

「・・・ジョルジュ、間違っても婆ちゃんとか呼びかけないでよ。アラクネの時間感覚はわからないけど女性に婆ちゃんは禁句だからね。」

「エマ様、どうしてそっちの方向に心配するんですか!俺が言いたいのは婆ちゃんの名前の魔物ですよ。呼ぶわけないでしょうが!!」

「ジョルジュ、からかってるんだよ。」

赤くなったり青くなったりしているジョルジュに見とれたのか店の前を掃除していた店員さんがボケっとなってた。


結論から言えば『ピッパちゃん』の住む森はアラクネの目撃情報はあったらしいけれど大きな被害も出ていないことが分かった。

祖父の侵入防止結界が効果をもたらしていてピッパちゃんやその眷属いればだけどが森で狩人に遭遇していないのか、ピッパちゃんがすでに死んでしまった可能性も考えないといけないかもしれない。


「ピッパちゃん、お亡くなりになってなければいいんだけど。」

「エマ様、いろいろと蜘蛛に対する言葉の使い方が間違っていると思いますけど!」


とりあえず明日は準備を整えたらピッパちゃんを探しに部屋の探査を決行することになった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



森を小一時間ほど歩いてみたけど特に気配も感じない。

「というか広くない?」

簡単な魔よけ結界を張って休憩を取る。魔法で出した水を汲んだコップから一口喉を潤したヴィヴがやれやれと言う口調で誰にともなく独りごちる。

「おじいさまは本当にピッパちゃんを大事にしてたのね。だったらあの糸の品質もわかるわ。」

「ピッパちゃんが快適に過ごすために広めみたいなんだよね。」

彼女の行動範囲を妨げないように広めの結界を引いたことはわかるけど小一時間歩いても結界の切れ目がないのはいかがなものかと思う。

「ピッパちゃん。なんだかねぇ。分かってるんだけどなぁ。」

エリックがポリポリと頬をかく。

「魔物とピッパちゃんが与えるイメージの乖離ですよね。」

「おう!しかもピッパとかよりによってスタン兄貴の娘だぞ。どうせいっちゅう話になるじゃねえか!」

「そうですよね!!実は僕も曾祖母の名前がピッパなんですよ。長生きしたから僕も会ったことあるし。」

同じく曾祖母がピッパという名前のジョルジュが力強く同意する。

「皺くちゃピッパばあちゃんとおむつも取れないピッパにアラクネのピッパとくりゃぁなぁ。」


「ピッパちゃんは子持ちかしら?1匹くらいは私にくれるかしら?」

これは放置。知らん、聞かん。スルーだ、察して。

同じ思いだったのか誰もヴィヴの疑問には答えなかった。


それからさらにテクテク歩く。

「エマ様、ちょっと足元見ていただけますか?」

ジョルジュが声をかけてきたので指さす方向を見ると小動物の骨がバラバラと転がっている。

「ここらで美味しいランチだかディナーだかした、んだろうな。」

エリックがうんざりしたように言う。

「キツネリス、牙リス、隼にキツツキ。雑食性だの。頭からバリバリ・・・」

シャンタルが骨の欠片を嗅ぎ周りそう言うと骨を魔法で土に返した。フランが風を起こし土を散らす。

「風に流れて行くべき場所へ。次の命の輪にまた入るが良い。」

ちょっとだけしんみりしたら探索再開だ。


薮をかき分けてさらに半刻ほど歩いたら突然かけられた声に私は反射で振り向いた。

『これはこれは久しぶりの人間だ。』


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


馬ほどの大きさの黒い影が木々の間から姿を現す。。

「うそ?」

「こんな大きくなるんだ。」

「やるか?」

「ピッパちゃんだったらどうしよう。」

「違ったらどうするんだよ!おとなしくランチになる趣味はねぇぞ。」

ひそひそ囁く私らの声が聞こえているのか蜘蛛は表情はわからないけど楽しげな声音で告げる。

『おや、まあ物騒なものをお持ちだね。最近はこのあたりにもとんと人の子を見なくてね。随分と久しぶりさ。まずは話をしないかい?』

ちょっとだけしゃがれたおばあちゃんみたいな声で蜘蛛が話しかけてくる。

「人の言葉がわかるなんて普通のアラクネじゃなくない?ピッパかもしれないんじゃ?」

油断なくそれぞれの得物を構えながらみんなが判断を求めるけれど私にもわかるわけが無い。


「ごめん!!ピッパちゃんって名前以外に分からない!!」

私がそう小さく叫ぶと

「ピッパ?おやおや久しぶりに聞いたね。懐かしい名前だ。」

おばちゃん声がちょっと懐かしそうに反応した。

虫の目が細められるわけじゃないけどなんだかそんな気がするのは声のせいだろうか?

なんだか背筋からゾクゾクとした違和感が全身に警告を発する。これは危険すぎる。本能の叫びとでも言うべきか。

「エマ!!」

シャンタルの鋭い叫びと同時に生ぬるい糸が体をキツく締め上げた。


すごく久しぶりの投稿になりました。

下書きはできてたんだけどなかなか手直しする時間がなくて・・・

次回でピッパちゃん編は終了の予定です。

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