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ベテラン狩人の不敵な微笑

「え?叔母さんこの家に住むんじゃないの?」

祖父の遺体を共同墓地に埋葬し弔いに関する行事がひとわたり落ち着いた朝、叔母からそろそろ帰宅しようと思うと告げられて驚いた。

「ええ。住むも何も私は今はリッスの村に住んでいるからね。」

数年前まで狩人(ハンター)としてギルドでAランカーの地位を得ていた叔母は仲間の一人と結婚して狩人を引退、今は馬車で2日行程ほどのメッスの街に住んでいる。

父とは年の離れた兄妹だったからまだ30歳になったばかり。今でも近隣の魔物退治や狩りに参加したりもする半分現役といってもいい。


祖父や父と違い魔法には素養も興味もなく武器は長剣というバリバリの戦士タイプで性格もあっさりしたその叔母さんはそう言うと困ったような言うべきか否か迷っているような表情を浮かべる。

「それはそうとエマはこの後どうするつもりなの?ヌヴェールには戻るつもりがないんじゃないの?」

叔母の問いかけに言葉を一瞬詰まった。リッスの村に住んでいる叔母は祖父の具合が明らかに悪くなってからブルグに戻ってきたのでまだきちんと話をしていなかった。

結婚前は冒険者として国を股にかけた活動をしていた叔母のアメリはヌヴェールの祖母宅に引き取られてからも1年に1度ほどは姿を見せてくれていたのでうすうす察するものはあるらしい。

「うん。もうヌヴェールには戻るつもりはないの。私はあそこにいないほうがいいと思うんだ。」

俯いた私の様子に叔母さんはひとつため息をつくと床に膝をつきその手を取った。

「エマも頑張ってたんだね。辛かったね。やっと帰ってきたのに大変だったね。」

冒険者時代の剣だこの残るアメリの手はヌヴェールに住む祖母の手とは違い硬くてゴツゴツしている。ずっとこらえていた涙が急に溢れてきた。

その温かい手が私の目からこぼれる涙の雫で濡れていくのに気が付くと叔母さんはそっと抱きしめた。

小さな嗚咽はやがて肩を震わし大きな泣き声になってもアメリ叔母さんはずっと私の背中をそっと撫で続けてくれた。


ひとしきり泣き終わり涙をぬぐうとアメリ叔母さんは改めて話を切り出した。

「私は今はダンテとリッスの街に住んでいるからブルグのこの家には住むことはできない。できればここにエマに住んでほしいと思っているの。」

一人で住むにはこの家は多少大きすぎるとは思わないでもないが片づけをしながらしばらく住むにはいいかもしれない。落ち着いたら小さな家に移るか下宿を探してもいいだろう。

そう話した私に叔母はなんとも複雑な気まずそうな、言うか言うまいか迷ってる表情を見せる。路頭に迷う線は消えたのになんだかとっても嫌な予感がする。

「私はそうしてもらえればありがたいけどどうして叔母さんそんな表情してるの?」

聞きたくないなぁと思いながら問いかけると叔母はさらに複雑な表情を見せる。ひょっとしてお金で解決しようと思っているのだろうか?

「ひょっとしてここに住むならお金を払った方がいいのかな?あんまりたくさんはないけどそれなりに持ってきているよ?」

「は?お金なんかの問題じゃないよ!!見損なってもらっちゃ困るね。たった一人の姪が住むんだ。むしろ祝い金を出したいくらいさ。元A級狩人(ハンター)の貯えを甘く見なさんなよ。」

いきなりの怒気に思わず椅子から吹っ飛びそうになった。Aランカーのマジ怒り、マジ怖い。

叔母は驚きっぷりに照れくさくなったのか少し頬を赤めると深呼吸を一つした。

「この家ね、実はそう簡単に手放すこともできない事情があるのよ。ねぇ、エマ。どうして家があるのにお葬式を会堂にしたの不思議だったでしょ。」

そういえば叔母は祖父が息を引き取ると早々に3階と地下への登り口を封印した。

それは魔術具を使って簡単には誰も侵入できないようにするという念の入れようで手伝いに来た街の人も首を傾げる厳重さだった。

弔問の客もごく親しい近所の人以外は町内の会堂を借りて行った。

ブルグの街では家で送るのがほとんどだったので奇異に感じる隣人もいたようだったが叔母は元々移住してきた祖父の実家の習慣だなどと主張していた。

叔母のアメリはつい3年ほど前までこの街を拠点にした希少なAランク狩人だったので街の人もわりとすんなり受け入れてくれてはいたが。


「封印したのは別に父さんの遺産があるから、とかそういう理由だけじゃないの。純粋に来客の安全のためよ。」

聞かない方がいい気がする。というか別にヌヴェールじゃなくても隣の町にでも引っ越すのはどうだろう?

内心の警報ではガンガンに警報が鳴りまくっているのに私は好奇心に逆らえず内なる声に耳をふさいだ。

「な?なんでそこまでしないといけないのかな?」

「エマは空間魔法とか扱えるのよね?」

「うん。そこまで得意とかじゃないけどね。知ってるでしょ?むしろ私の得意は魔法道具・・・」

「まぁっ!父さんと趣味嗜好が同じ、これはもうそうなる運命だったのかもしれないわ!それにエマも全く無関係ってわけでもないし。」

「いや、叔母さん。できるけど得意ってほどじゃない。てかなんでおじいちゃんの家の秘密に私が?先月来たばかりよ。」

「エマ、誰にでもスタートはあるわ。これも運命の女神のお導きね。英知の神に今後の御加護を祈らなくては。」

天井に向かって祈るその姿に嫌な予感ばかりがむくむくと膨れ上がっていく。

「エマの気持ちはよくわかったわ。でも今日のところは準備が必要だから明日理由を説明するから。エマは店の在庫の中から攻撃用の玉薬と呪符を用意して置いて。気配遮断、攻撃用を各種1セットずつ。

ポーションもね。疲労回復、状態異常回復、軽度の魔物避けくらいでいいから。魔法鞄(マジックバッグ)に入れて用意するのよ。あ、採集用の服とブーツ穿いておきなさいね。じゃ、宿に戻るわ。おやすみなさい。」

必要なものをつらつらと指示するとアメリは準備がいるからとそそくさと夫の待つ宿へと帰っていった。


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